3戦ぶり先発応えた長野5打点 やっと貢献できた

[ 2013年3月13日 06:00 ]

<日本・オランダ>8回裏2死二、三塁、左前に2点適時打を放ち、ベンチに向かって控えめに「バーン」を決める長野

WBC2次ラウンド1組 日本10-6オランダ

(3月12日 東京D)
 苦しかった。とにかくつらかった。すべての思いをバットに託し、長野(巨人)は打った。侍ジャパンの1位通過を決める貴重な2安打5打点。それでも笑顔は見せなかった。

 「勝ったことが一番だと思います。(ここまでは)全然、貢献できなかった。チームが勝ってるので救われてます」

 2回。1―2と逆転してなお1死満塁で打席が回ってきた。「みんながつないでくれたんで、何とかしようと」。肩口から入ってくる127キロのスライダー。今まで打ち損じてきた甘い球をしっかり引きつけ、左翼線にはじき返した。走者一掃の二塁打。2点差に追い上げられた8回は左前へ2点適時打。やっとチームに貢献できた。

 山本監督から「絶対に外せない選手」と期待されたキーマン。元来がスロースターターで状態が上がらず、体の切れを欠いて不振に陥った。1次ラウンドは10打数2安打と苦しみ、2次ラウンドでスタメン落ち。思うように打てずに、橋上戦略コーチは「一人で悶々(もんもん)としてるようだった」という。それでも首脳陣は声を掛けず、そっとしておいた。天才肌で人には練習すら見せない侍の復調を信じていたからだ。

 弱みを見せず、状態を上げるために陰でバットを振った。そしてベンチでは、いつもと同じように振る舞う。落ち込む姿は一切見せない。チームのムードを一番に考えてのことだ。昨年11月のキューバ戦のとき、長野は初対面の楽天・嶋とロッテ・角中を食事に誘った。嶋は言う。「人間として凄い。初対面の僕らにも気を使ってくれるんだから」。そんな長野がついに打った。山本監督は「打てないときは誰だって下を向く。これで乗っていってくれるはずだ」と目を細めた。

 ここ2試合のベンチスタートを「状態がいい選手が出るのが一番。僕は結果が出てない」と正面から受け止め、よみがえった。決勝トーナメントの舞台は外野の広いAT&Tパーク。長野の守備力は欠かせない。「環境も変わる。向こうで貢献したい」。まだ笑顔はない。笑うのは、世界一を手にしたときだ。

 ≪5打点は日本代表最多タイ≫長野が2安打5打点の活躍。日本代表で1試合5打点は06年1次ラウンド中国戦で西岡が挙げたのに並ぶ最多タイ。大会最多は06年大会でグリフィー(米国)が挙げた7打点。

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2013年3月13日のニュース