【サーフィン】オレアリー・コナー 東京五輪見て“大和魂”覚醒 豪州生まれも母の母国・日本でメダル狙う
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サーフィン男子のオレアリー・コナー(30)は、日本女子サーフィン界の黎明(れいめい)期に活躍した母・明美さん(旧姓・柄沢、63)の母国を代表して初の五輪に挑む。昨年11月にオーストラリアから日本への登録変更が国際オリンピック委員会(IOC)に承認された。生まれ育った国ではなく、なぜ日本を選択したのか。アスリートとして純粋な思いを貫き世界最難関のサーフスポットで知られるチョープー(フランス領ポリネシア・タヒチ)に挑む。(取材・構成 阿部 令)
プロ最高峰のチャンピオンシップツアー(CT)を主戦場とするオレアリーは、一風変わったジャージーを着用した。右肩にはオーストラリア国旗、左肩には日の丸。21年に3季ぶりのCT再昇格に合わせてツアー主催者と交渉し、2つの国を代表しているとの思いを表現した。「両方の国を代表しているつもりなので、両方を背負った」と、1年遅れで開催された東京五輪の年から、日本への思いを強くした。
サーフィンを始めたのは意外に遅く9歳。その理由は母が元プロ、アイルランド系オーストラリア人の父フィンバーさんも競技者ではないもののビッグウエーバーだったため、両親と連れ立って行く海で波に乗るのは不可能だったから。代わりに空手、水泳、テニス、サッカーとさまざまなスポーツに取り組み、特に好きだったサッカーは15歳まで続けた。ポジションはディフェンダーながら、「ルーニーが好きだった。ベッカムも」と点取り屋に憧れた。
「ちょっとだけオーストラリアが強い。住んでいるし、育っているので」と自分の中に宿る精神性を素直に表現するが、シドニー郊外にある自宅内は日本そのものだった。家は土足厳禁、食事は白米が主食で母の手作り料理を箸を使って食べた。いただきます、ごちそうさまのあいさつは当たり前。30歳で結婚して移住した明美さんは英語が苦手だったため、母子の会話はいつも日本語。「家の中は日本、一歩外に出るとオーストラリア」という生活環境で育った。加えてシーズンともなれば明美さんを頼りに日本人が大挙して自宅を訪ね、数週間寝泊まりしてサーフィンに明け暮れた。宿賃代わりの日本の食材、週刊誌、人気番組のビデオが絶えず自宅にあふれた。多い時には10人の訪問客とともに、オレアリー一家も大広間で雑魚寝した。人呼んで「柄沢道場」で過ごした日々が、静かに日本人としての意識を心の中に堆積させていく。
その意識が覚醒するきっかけが東京五輪だった。「ツアーに集中していて、そっちの方が大切だと思っていた。五輪が凄いとは思っていなかった」が、オーストラリアでもテレビ中継されたのを見て、「凄いなと思った」と真逆に振れた。男子銅メダルのオーウェン・ライトは同じ町に住む仲間。メダルを見せてもらい、3年後を意識し始めた直後、明美さんから「あんた、日本代表にもなれるのよ」と言われ、気持ちは一気に傾いていく。
熟考の末、22年5月に登録変更を決断。だが手続きは困難を極め、1年以上を要すことになる。同年9月のワールドゲームズ(WG=世界選手権に相当)にはオーストラリア代表入りが内々定していたが、出場すると18カ月間は登録変更できないために辞退した。その大会で日本男子は団体優勝を果たし、パリ五輪に1人増の最大3人が出場できる権利を獲得する。オレアリーはその枠を狙って移籍するのではないか。真実を知らない人たちの陰口は、母子の耳にも届いた。
「日本の方がよりチャンスがある。持っているもの(国籍)は使った方がいい」とは明美さん。目標達成へより可能性が大きいのはどちらか。ごく当然の選択はいわれのない批判も浴びたが、「日本人として日本の文化を自分の中に持っている。日本の子供、サーファーにとって、いいロールモデルになりたい」との思いも、何らうそ偽りのない本心だった。そして、日本連盟から実績などが評価されて代表に選出された。
体の成長を待ち、20歳でようやくウエートトレーニングを開始。フィジカルを生かしたパワーサーフィンが持ち味で、チョープーのバレル(筒状の波)攻略にも「ちゃんとフォーカスして準備すれば、いいパフォーマンスを出せると思う」と自信を示す。好きな日本語は「お母さんに小さい頃から言われていた」という「気合」。父譲りの顔立ちに、母譲りの勝負根性を宿し、大波の先にある栄光を目指す。
≪22日からタヒチ・プロ 出場者の半数が五輪出場を予定≫オレアリーは22日から五輪会場と同じチョープーで開催されるCT第6戦タヒチ・プロに出場する。オープニングラウンドは第1組で登場し、パリ五輪オーストラリア代表のイーサン・ユーイングらと対戦。自身を含め、出場24人中12人が五輪にも出場予定で、大会はさながらプレ五輪の様相だ。
タヒチ・プロには過去4度出場し、最高成績は3度の9位にとどまるものの、8点以上のエクセレントスコアは通算7回と上々のスタッツを残している。年間ランキングは現在21位でミドルカット(第5戦までの23位以下がツアーから離脱)をギリギリですり抜けたオレアリーにとって、上位進出に向けても大事な後半戦のスタートとなる。
≪五十嵐&稲葉も狙う≫オレアリー、東京五輪銀メダルの五十嵐カノア(木下グループ)、稲葉玲王の日本男子3人は全員パリ五輪でメダルを狙っている。五十嵐は16年からCTに参戦し続けており、実績、経験値ともに日本のエース格。タヒチ・プロでも22年に5位に入っており、チョープーを得意としている。稲葉はCT未経験だが、昨年条件付きで代表に内定した後は足しげくタヒチに通い、ビッグウエーブでの練習量を武器にしている。
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