【第100回ラグビー早慶戦記念企画】早大OB廣野眞一氏インタビュー(1)初の早慶戦後は尽き果てた
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ラグビーの早慶戦は11月23日に東京・国立競技場で、節目の100回目の対戦を迎える。日本ラグビー界の黎明期から連綿と続いてきた伝統の一戦は、一つの試合や順位争いを超越した、ライバル校同士のプライドを懸けた戦いの歴史だった。スポニチでは記念すべき試合を前に、両校のOBをインタビュー。早大からは1978年度卒で早慶戦に3度出場した廣野眞一氏(67=集英社社長)が登場し、当時の思い出、母校やラグビーへの思いを語った。(取材・構成 阿部 令)
――廣野さんは2年だった76年から3年連続で早慶戦に出場されています。45年以上も前ですが、当時の記憶はありますか。
「試合はどれも良く覚えています。76年は夏合宿でケガをしてしまいました。じん帯をやってしまった。ところが早慶戦前の立大との試合前に、またケガ人が出てしまった。その時点でだいぶ良くなっていたので、対抗戦で初めて出場したら、4トライ挙げました。それで慶大戦でも出場できたので、非常に思い出深いですね。当時はまさか、2年で出られるとは思っていませんでした。試合では無我夢中。初めて出た立大戦と慶大戦後は、試合後に何もできなかったことを覚えています。普通ならOBが食事やお酒に誘ってくれるのですが、全部断って、寮に帰って寝ていました。本当に尽き果てていました。その次の早明戦後はちょっと余裕ができて、懇親会にも出席しましたが、その2試合の後は空っぽになりました」
――翌77年は、対抗戦の連勝が60で止まるショッキングな黒星となりました。
「私自身、肉離れで早慶戦まで公式戦に出られませんでした。まだ本調子ではなかったのですが、そうも言っていられないほど、チームの調子が良くなかったので出ましたが、まさか負けるとは思いませんでした。後になって考えると、前年度の大学選手権準決勝でも慶大と対戦したのですが、この時はわずか2点差で逆転勝ちしたんです。ところが慶応は、試合途中なのに勝ったと思って泣いている選手もいた。それで逆転負けしたから、相手には並々ならぬ執念があったんでしょうね。実は前のシーズン終了後に不祥事があって、半年間は公式戦や遠征を自粛していました。対抗戦は出られることになりましたが、そういうバタバタの年でした」
――最終学年の78年も、悔しい敗戦で早慶戦は1勝2敗で終えることになりました。
「この年も絶対に勝てると思いました。今でも同期でお酒を飲むと、“おまえのこのプレーが悪かったんだ”とか、“おまえがあんなことをやったから負けたんだ”とか、罵り合いになります(笑い)。僕はパスもキックも凄く下手だったので、“おまえがもっとうまいパスができれば”とか、しょっちゅう言われますね」
――早慶戦がいかに特別な試合であるかが分かりますね。当時から試合に向けた特別な儀式などはありましたか。
「早稲田は雰囲気づくりがとてもうまくて、最初の年は僕もそれに乗せられて、試合に出る感じでした」
――具体的にはどんなことが行われるのでしょうか。
「当時、寮は地方出身者が優先的に入っていたのですが、公式戦のシーズンに入ると、レギュラークラスは都内から通いの部員も入寮し、早慶戦1週間前くらいからは試合メンバーとリザーブの全員が寮に入り、合宿を行っていました。模造紙に大きく『寮内緊張』と書いた張り紙もして、寮全体がピーンと張り詰めた雰囲気になります。試合の3、4日前にはOB会がメンバーだけを集めて、激励会と称した夕食会も開かれていました。会長以下、幹部10人くらいと、ゲストスピーカーとして2、3人が呼ばれ、すき焼きやしゃぶしゃぶを食べさせてもらいました。ゲストスピーカーもOBで、中には大時代的に“死ぬ気でやれ。死んだら骨は拾ってやる”と言われる方もいましたが、最初はピンとこない。ラグビーでは死ねないでしょと思っていたんです。ところがこれは早明戦ですが、ロッカールームで部歌を歌い、バーッとピッチに出て行くと、国立の6万人の観衆がぶわーっとなり、あ、これは死んでもいいな、と思えました。早慶戦でも近いものがありました」
――ゲストスピーカーにはどんな方がいらっしゃいましたか。
「よく覚えているのが、台湾出身で日本代表にもなった柯子彰(か・ししょう)さんです。当時、史上最高のセンターと言われていました。いろいろと考えてラグビーをされていたとお話されたのですが、当時私も、この局面ならこうしようとか、この地域ならこの選択があるとか、試合前に頭の中で考えていました。まだイメージトレーニングという言葉がない時代で、後から考えると、イメージトレーニングそのものでしたね」
――練習にも特別メニューなどはありましたか。
「練習も他の部員が見守る中で、試合メンバーだけでやります。そして最後にタックルマシンに慶応のジャージーを着せて、1人一発ずつやってから上がっていました。最後のミーティングではジャージー渡しがあり、近くにある東伏見稲荷のお守りとジャージーを塩で清めて、1人ずつ渡してもらいました。その後は部屋に帰り、靴を磨き、靴紐も新しいものに変える。寮内はシーンとしていました。そして実はたまたまなんですが、私は試合前、必ず『カントリーロード』を聴いていました。当時はヘッドホンなんて持っていませんでしたから、ラジカセを小さなボリュームでかけて。なぜそうしたか覚えていませんが、あの曲を聴くと、沸々と“明日はやるぞ”という気持ちになりました。19年W杯で日本代表がカントリーロード(を原曲としたチームソング)をみんなで歌っていたので、驚きましたね」
=インタビュー(2)に続く=
◇廣野 眞一(ひろの・しんいち)1956年(昭31)9月2日生まれ、大阪府出身の67歳。東淀川高2年からラグビーを始め、早大ではセンター、ウイングとして活躍。79年4月に集英社入社。各部署を渡り歩いた後、14年8月に取締役、19年8月に専務取締役就任。20年8月から同社社長。
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