課題は明白、解決策もある。あとは決断できるかどうか――岐路に立つ日本ラグビー界
エベレスト登頂に例えたラグビー日本代表のW杯フランス大会優勝への挑戦は、1次リーグを2勝2敗の敗退で幕を下ろした。D組3位で次回27年大会の出場権は確保したものの、決勝トーナメントにも到達できなかったという結果は、理想と現実に大きな開きがあったと捉えていいだろう。果たして頂上まで、あとどれほどの距離があるのか。そして届かなかった要因は何なのか。
原因究明は、実はそれほど難しくない。最たるものは、すでに盛んに指摘されている通り「選手層の薄さ」。大会を通じて一度も出番のなかった選手の数は、15年は31人中2人、19年は31人中5人で、今大会では追加招集された山中を含め、34人中5人だった。割合としては4年前より少ないが、サモア戦では急きょリザーブ入りから5分だけ出場し、アルゼンチン戦ではベンチ待機も出番のなかった福田の使われ方を見れば、戦力になりきれていなかったのは明らかだった。
1次リーグで出場した選手は計29人だったが、この数も4大会ぶりに8強入りしたフィジー、1勝もできずに敗退したジョージアと並んで最少だった。一方で8人が全4試合に先発し、この8人を含む計18人が途中出場を含めて4試合に出場している。皮肉なことに、前回大会よりも1次リーグの期間が1週間延びたことで、日本は全ての試合が中6日以上と日程面でも恵まれ、主力がより多くの試合に出やすい状況だった。現実的には最も格下のチリとの対戦で主力を温存する選択肢があったはずだが、大会初戦だったことも手伝い、ジョセフ・ヘッドコーチはその選択をしなかった。W杯は試す場ではなく、あくまで4年に一度の真剣勝負の舞台。石橋を叩いて渡る選択肢は、現場指揮官としては当然だったとも言える。
なぜ4年前も課題だった選手層は薄いままだったのか。これも答えは明白で、新型コロナウイルスの影響が一番大きかった。20年の丸1年間は代表活動が止まった。当時のトップリーグも途中打ち切りとなったことで、選手の新陳代謝は思うように進まず。W杯本番を含め、16~19年は非テストマッチを含めた日本代表戦が38試合あった一方、20~23年は26試合に留まった。前者の4年間は75人が初キャップを獲得した一方、後者は33人と半分に留まる。日常的に国際経験を積めるスーパーラグビーに参加する手立ても失った。
不可抗力とも言える状況に、手をこまねいていたわけではないが、その都度逆風にさらされた。20年秋にはニュージーランドに長期滞在し、州代表などとの試合を重ね、最後にオールブラックスと対戦するプランが浮上したが、現場と協会側の意思疎通がうまくいかず、白紙になった。活動を再開した21年も、当時の代表メンバー全体のワクチン接種率が低かったため、特に海外遠征ではさまざまな制約を強いられ、強化の足かせになっていた。
W杯が1年後に迫った22年、遅れを取り戻そうと春には正規の日本代表とナショナルデベロップメントスコッド(NDS)に分け、計70人規模で活動。秋も約50人で当初の合宿を行ったが、全ての選手に出場機会があったわけではない。何より結果的に痛手となったのは、当時松田がケガで不在だったSOや、主にフィフィタ、ファンデンヒーファー、山中が中心選手だったバックスリーは、W杯本番ではガラッと顔ぶれが変わったこと。大会登録メンバーも8月15日の最初の発表から月末まで追加や入れ替えを繰り返した。誤算、変心、迷走と、最後まで歯車はかみ合うことなく本番を迎え、望まぬ結果に終わった。
4年後、再び8強入りを果たすだけの力量ある選手層をつくるためには、どんな方策が考えられるか。スーパーラグビーに再び参戦し、W杯イヤーは年明けから長期合宿を張れば解決するが、今となっては現実離れしている。リーグワンは24~25年シーズンのフェーズ2から試合数を増やす計画で、時期が重複するスーパーラグビーの参戦も、長期合宿も不可能。その中で現実的なプランの一つが、NDSの常設化と実戦機会の創出だろう。
大会中、本紙で試合解説をしていただいたリーグワン静岡の堀川隆延アシスタントコーチも指摘したように、選手層を厚くするには最も効果が見込め、実現可能な策だろう。6月には福岡市内に自前の強化施設であるジャパンベースを開設したことで、ハード面も整っている。ニュージーランド、オーストラリアとは相互連携の覚書を交わし、正規代表同士のテストマッチ以外の試合も組みやすい状況にある。
そして選手が日常的に参加するリーグワンを底上げするために提案したいのが、出場登録カテゴリーのさらなる解放だ。現在は他国代表歴のある選手、いわゆるカテゴリーC選手の試合登録は3人以下で、オンザピッチも同数だ。これを例えば倍の6人に広げ、世界のトッププレーヤーの来日をさらに促し、レベルを高める。若い日本人選手が割を食うのは承知の上。ただ、その環境でメンバー入りを勝ち取り、試合で揉まれれば、スムーズに代表レベルで活躍できる選手が育つ。一方でそのくらいドラスティックな変化がなければ、4年後までにリーグのレベルを引き上げることは難しい。
もちろん継続して海外挑戦をする選手の出現も重要だろう。21年にハイランダーズでプレーした姫野、21年、22年とフランスに挑戦した松島の後に続く選手が現状ではいないのは寂しい。ここは一つ、強化担当責任者としてハイランダーズに復帰するジョセフ・ヘッドコーチにつてを頼ってはどうか。毎年1人でも2人でも成長株の選手をハイランダーズに獲得してもらい、スーパーラグビーを経験させる。日本協会がジョセフ氏とアドバイザリー契約を結ぶなどすれば、比較的容易に事が進むのではないか。
11日の総括会見。退任するジョセフ・ヘッドコーチが指摘したのは、日本ラグビー界の特殊な構造が、代表強化の足かせとなっているということだった。思えば前任者のエディー・ジョーンズ氏も同様の指摘を行い、15年大会後に退任した。8年前から日本ラグビーも、ラグビー界の構造も発展はしたが、そのスピードは世界の潮流に追い付いていない、あるいはW杯で望む結果を得るためには足りていないということになる。
去り際のヘッドコーチに2代続けて、同じメッセージを発せられた日本ラグビー界。どう向き合い、課題解決に取り組むのか。あるいは聞き耳を持たず、流してしまうのか。変革の波に乗ったフィジーは8強入りを果たし、センセーショナルな活躍を見せたポルトガルは世界ランキングで一つ下の13位に迫っている。日本は今、大きな岐路に立たされている。(記者コラム・阿部 令)
2023年10月12日のニュース
-
渡辺雄太 日本バスケットボール協会の「代表引退認めない」方針に反応 W杯前に「連敗で引退」示唆発言
[ 2023年10月13日 03:10 ] バスケット
-
【ラグビーW杯】アルゼンチン先発に日本戦ハットトリックのM・カレーラスら 14日準々決勝ウェールズ戦
[ 2023年10月13日 00:40 ] ラグビー
-
熊本オープン プロ15年目の北村晃一が逆転で大会初V 地区オープン通算13勝目
[ 2023年10月12日 21:05 ] ゴルフ
-
“ビキニの美魔女”長瀬陽子 大会開催のスペイン到着、バックショットも披露し「チーム日本一丸で頑張る」
[ 2023年10月12日 18:45 ] スポーツ
-
ビキニフィットネス・安井友梨 国際大会の舞台に到着し決意「前向きな気持ちが、明るい未来を切り開く」
[ 2023年10月12日 18:22 ] スポーツ
-
“ビキニ”ダンシーあずさ 国際大会開催のスペイン到着「17時間フライトも…着いたら心も身体も元気に」
[ 2023年10月12日 17:59 ] スポーツ
-
【焼津巡業】熱海富士、優勝を争った貴景勝の胸を借りてぶつかり稽古「出してくれてうれしかった」
[ 2023年10月12日 17:39 ] 相撲
-
日本バスケ協会が代表引退を認めない方針「基本的にそういう概念はない」
[ 2023年10月12日 17:33 ] バスケット
-
ペア“りくりゅう”がスケートアメリカ欠場 木原が腰椎分離症と診断「一日でも早く練習を」
[ 2023年10月12日 17:22 ] フィギュアスケート
-
【焼津巡業】翠富士“必殺技”肩透かしを「15本決める」狙うは九州場所全勝V?!「目標高く」
[ 2023年10月12日 16:41 ] 相撲
-
石川遼が68の好発進「かなり良かった」 パー3除く全てのティーショットで1Wを使用 日本オープン開幕
[ 2023年10月12日 15:28 ] ゴルフ
-
岩井明愛 Vならポイントランクで首位「楽しんで自分ゴルフを」
[ 2023年10月12日 15:16 ] ゴルフ
-
古江彩佳が日本人最多の同一大会3連覇に挑む「しっかり集中できれば」
[ 2023年10月12日 14:39 ] ゴルフ
-
立大・上野裕一郎監督が謹慎から即解任「大学として不適切と判断」箱根予選会は原田総監督が代行
[ 2023年10月12日 14:19 ] 駅伝
-
八村塁 先発出場で3試合連続の2桁得点となる13得点!開幕に向けて好調キープ チームは2連勝
[ 2023年10月12日 13:37 ] バスケット
-
課題は明白、解決策もある。あとは決断できるかどうか――岐路に立つ日本ラグビー界
[ 2023年10月12日 12:31 ] ラグビー
-
立大、駅伝関連イベント中止相次ぐ 上野裕一郎監督×アイドルのトークショーも中止に…大学が謝罪
[ 2023年10月12日 10:22 ] 陸上
-
イ・ボミ 日本ツアーの「なかま」との食事会ショット披露し日本語で思い「うれしいし しあわせです」
[ 2023年10月12日 09:55 ] ゴルフ
-
【ウォームアップ】ランニングの効果を高める準備運動9つ
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
きのこの種類と栄養|しめじ、しいたけ、エリンギ、えのき、まいたけ…
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
下痢のとき、下痢止め薬は飲んでいい?飲まないほうがいい?
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
意外!握力が弱いとこんな“デメリット”が…
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
実は「オートミールは消化に悪い」って本当?胃がムカムカする人への対処法[管理栄養士監修]
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
首まわりガッチガチな人ほど痛い!「この動き」試してみて
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
乳酸菌とりすぎると?「癌になる」「おならが出る」の噂の真相[管理栄養士監修]
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
座ったままできる!ダイエット筋トレ(お腹痩せ編)
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
座ったままできる!ダイエット筋トレ(背中痩せ編)
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
睡眠の質を上げる食べ物は「コレ」!寝ても疲れが取れないときに
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
ブロッコリーと鶏むね肉が「最高の筋トレ飯」である理由
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
脳疲労が溜まりやすい「意外なタイプ」とは?専門家コメントつき
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
【早見表つき】「シンデレラ体重」ってどれくらい?モデルに多いけど“危険性”も…
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
脳疲労になりやすい人、なりにくい人の特徴
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
筋トレすると「幸せホルモン」が出るってホント?
[ 2023年10月12日 09:00 ] MELOS
-
ラグビー日本代表帰国 ジョセフHCが2つの提言 再び8強へ 完全プロ化&海外修行
[ 2023年10月12日 05:20 ] ラグビー
-
ラグビー日本代表 HC後任選び 日本協会・土田会長「できるだけ早く決めたい」
[ 2023年10月12日 05:20 ] ラグビー
-
ラグビー日本代表帰国会見 流は改めて引退表明 姫野主将「もっと強くなりたい」
[ 2023年10月12日 05:20 ] ラグビー
-
錦織ジャパン・オープン欠場 7月にツアー復帰も左膝の痛みなどで全米オープンなども出場せず
[ 2023年10月12日 05:05 ] テニス
-
立大駅伝チーム・上野監督が謹慎 女性部員との不適切な交際報道、14日の箱根予選会は監督不在
[ 2023年10月12日 05:05 ] 駅伝
-
札幌五輪34年以降も立候補不透明…30年招致断念を正式証明、JOC山下会長「大変申し訳ない」
[ 2023年10月12日 05:05 ] 五輪
-
蝉川泰果アマ、プロ連覇へ「後悔ないようにできれば」アダム・スコットと同組「ワクワク」
[ 2023年10月12日 05:05 ] ゴルフ
-
サーフィン松田詩野 金メダリストの仲間入り「TOKIOインカラミ」と所属契約「サポートを力に」
[ 2023年10月12日 05:05 ] サーフィン