二所ノ関親方が九州場所総括 阿炎こそ大関候補最右翼 豊昇龍と若隆景飛び越えて

[ 2022年11月29日 04:40 ]

優勝決定戦の巴戦で貴景勝(左)を破り、幕内優勝を決めた阿炎(撮影・成瀬 徹)
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 一年納めの九州場所は平幕の阿炎(28=錣山部屋)が28年ぶりの巴戦を制して初優勝を飾った。阿炎は28日一夜明け会見を開き、大関昇進への思いを口にした。史上初となる平幕の3場所連続優勝や、年6場所全ての優勝力士が異なるなど、混戦模様だった一年。本紙評論家の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)も阿炎を次期大関候補の1番手に挙げ、優勝の要因と今後の課題を挙げた。

 千秋楽は阿炎のために舞台が出来上がっていた、そんな印象を受けました。本割の高安戦。完全な「我慢勝ち」でした。かち上げも予想できており、冷静にかいくぐって圧力をかけることができたと思います。根負けした相手の引きに乗じて一気の攻め。高安一色だった場内のムードをぶっ壊し、流れを一気に引き寄せました。

 そして決定戦の変化。大一番であの選択は勇気が必要ですが、土俵下の貴景勝に心理的な動揺を誘ったことも大きかったと思います。大関は警戒し、立ち合いが遅れました。そこを見越して主導権を握りました。平幕が優勝するには必要だった作戦かもしれません。豊昇龍、若隆景を飛び越えて大関候補の最右翼に浮上したと思います。思い切りの良さと精神力の強さ。彼のイメージもまた変わりました。

 長身で腕も長く、相手には嫌なタイプの力士です。今後の課題は、一日一日全力で取る「阿炎ペースの相撲」を継続することです。以前にも指摘しましたが、あっさり負けることが多いのも彼の相撲。勝っても負けても次につながることを心がければ、2度目の優勝と上(大関)は現実のものとなるでしょう。相手が嫌がることを考え、引き出しを増やすことも必要です。

 今年6場所全てで勝ち越したのは関脇の2人だけでした。11勝で技能賞を獲得した豊昇龍はだいぶ圧力がつき「重み」が出てきました。大きな相撲も魅力のひとつ。バランスもいいので豪快に取る姿も格好いいです。

 若隆景は弱点も出た場所になりました。千秋楽、貴景勝の張り手に対して顔を背けてしまいました。顔なんてくれてやる、くらいの覚悟で稽古場で若い衆に顔を張ってもらい、突き押しの対応力を磨いてもらいたいです。高安は1年で3度も千秋楽の優勝争いに絡みました。実力は一番あります。引き続き一番の重みを感じて精進してほしいと思います。(元横綱・稀勢の里)

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2022年11月29日のニュース