今井 実家被災のあの日から4年…世界切符に「いい表情でゴールを」

[ 2015年3月11日 18:48 ]

<世界陸上マラソン日本代表選手発表会見>世界陸上マラソン日本代表に選ばれ、ガッツポーズする今井正人(左)と前田彩里

 この日に代表発表があることは、前から知っていた。「自分の中では重要な日。意識はしていました」。11年3月11日の東日本大震災から、ちょうど4年。福島・南相馬出身の今井正人(30=トヨタ自動車九州)が、8月の世界選手権(中国・北京)の男子マラソン代表に決まった。

 「こういう日に代表になったということは、自分にとって使命があると思う」

 あの日、南相馬の実家は津波に襲われ、1階部分が流された。写真や順大時代の箱根駅伝総合優勝のゴールテープは消えた。昨年8月、中学生の指導のため地元に戻った。もう実家はなく、更地になっていた。

 「家もなくなっていて…。すごく寂しい気持ちになった」

 被災地について問われると、今井は慎重に言葉を選ぶ。「勇気、元気を与えたい」と口にすることはない。被災地のために走る、などと美談にされるのも本意ではない。自分が活躍することで地元に明るい話題を届けられるのも事実だが、地元の声援に自分が支えられているのもまた、事実だから。

 「たくさんの方に支えられて、今いるんだなってすごく噛みしめている。すごく背中を押してもらっている。結果で恩返ししたい気持ちが強い」

 順大時代に箱根駅伝の5区で活躍し、トヨタ自動車九州に進んだ。マラソンではなかなか結果が出せなかったが、地元の声援はいつも温かかった。10回目のマラソンで、ようやくつかんだ世界切符。世界選手権で日本人最上位入賞なら、16年リオデジャネイロ五輪代表に決まる。リオ切符も表彰台も明確な目標だが、それ以上に目指すものがある。

 「胸を張って、いい表情でゴールしたい」

 都内で会見した今井が控え室に戻った時、時刻は震災が発生した午後2時46分だった。目を閉じ、静かに黙とうを捧げた。あれから4年。運命の日から、世界へのアタックが始まった。 

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2015年3月11日のニュース