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コロナ患者受け入れ風評拡大…経営苦の守谷慶友病院 職員の臨時手当支給へネット寄付募集

[ 2020年11月26日 11:59 ]

 新型コロナウイルスの新規感染者を受け入れる守谷慶友病院(茨城県守谷市)が26日、風評拡大で経営状況が悪化したとして、職員の臨時手当を支給するためにインターネットで寄付を募るクラウドファンディングを開始した。目標金額は約1000万円。クラウドファンディングサイト「レディーフォー」を通じて12月25日午後11時まで支援を呼び掛ける。

 この日、病院側が会見。今村明院長は深刻な医療危機に加え「経営状況はかなり危機的な状況だ」と窮状を訴えた。

 同院は新型コロナが日本で広がり始めた2月に茨城県から要請を受けて感染者用の病床を確保。3月17日に初の陽性者が確認され、4月28日には陽性患者の対応をしていた看護師1人が院内感染した。24日までに1142人の発熱患者を受け入れ、そのうち陽性患者は24人。できる限りの感染症対策をしてきたが、防護服不足で割烹着で対策に取り組んだ医療従事者もいた。

 未知とのウイルスとの戦いを続けながら地域の医療を守るために心身をすり減らした従事者に追い打ちを掛けたのは風評被害だ。「従業員の家族にまで差別がおよぶ無知、無理解があった」と医療法人慶友会の石井慶太理事長は言う。病院側の聞き取りによると、子どもを保育園に通わせている女性事務員は「送迎はお父さんが対応し、お母さんは控えて」と言われ、濃厚接触ではないことを説明し預かってもらった。女性看護師は自身の職場がコロナ受け入れ機関であることを理由に身内が職場で「4月から休んで」と言われ、5月も休むよう言われたことから身内は自主的に辞めたという。総務担当者は「心の糸がいつ切れてもおかしくない状況だ」と医療従事者とその家族への理解を求めた。

 今村院長によると、風評被害に伴い入院患者が減少。4月28日に1人の院内感染が確認されたことで、入院患者は5月が前年比12%減、6月は16%減、7月は13%減、8月は12%減と推移。診療報酬が減ったことで経営状況はひっ迫した。損益は4~8月で前年同時期に比べて計約1億8360万円の赤字となった。

 国の補助金は今後受け取れる分も含めて、約1億5000万円。ただ、入金を確認できているのは約3230万円で3割弱。今村院長は「キャッシュフローとしては厳しい状況だ」と渋い表情を浮かべた。現時点で4~8月の収支確定分の損益合計は昨年比で約7000万円の減少となっている。病院側は賃金引き上げの見送りに加え、「ボーナスも例年通りの支給は困難だ」とした。

 さらに、今冬の第3波で医療崩壊も現実味を帯びる。陽性患者の病床として12床を確保しており、現在8人が入院中。今村院長は「この2週間で、入院患者が2、4、6、8人と急激に増えている。もうそろそろ医療体制はギリギリだ」と危機感を強める。それでも「うちの病院が受け入れを止めたら、この役割をどこかの病院がやらなければいけない。そうなると医療崩壊につながる」と悲壮な覚悟を口にした。

 深刻な状況の中で今村院長は「最前線に立つことで家族に反対されたり、自宅になかなか帰れない職員がいる。使命感や義務感に頼るのはもはや困難だ」と現実を吐露。法人を含めた職員約500人への臨時手当を支給することで「第3波へ対応するためのモチベーションにしたい」と語った。

 クラウドファンディングサイト「レディーフォー」では支援コースとして1口3000円から100万円の7コースを用意。支援者へのリターンとしては、お礼のメールや公式ホームページへの名前掲載、報告書などがある。レディーフォーの担当者は「同じような悩みを抱えている全国の医療機関の支えになれば幸いです」とさらなる広がりに期待を寄せた。

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2020年11月26日のニュース