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日本代表GK川島永嗣 能活さんとナラさん見てきたから「妥協しない」

[ 2022年10月25日 04:00 ]

ストラスブールでインタビューに応じた川島(撮影・小海途 良幹)
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 11月20日に開幕するW杯カタール大会まで、あと26日と迫った。日本代表選手のインタビュー第4弾は自身4度目の出場を目指すGK川島永嗣(39=ストラスブール)。海外13シーズン目で出場機会に恵まれない状況が続きながらも第一線で戦う守護神が、挑戦し続ける意味とW杯への決意を語った。(取材・構成 古田土 恵介)

 ――4度目の本大会が目前に迫った。
 「4年という年月でサッカー界は大きく変わる。欧州の高いレベルでプレーさせてもらい、今の自分は何をできるのかに対する興味はある。同じ大会はなく、次のW杯に行けるかも未知で“こんな大会にしたい”はない」

 ――1次リーグではスペイン、ドイツなど強豪国と激突する。
 「本気の強豪と真剣勝負できるチャンスは多くない。今は欧州でプレーしている日本代表の選手が多く、みんなが高いレベルで経験を積み重ねられている。対戦した時のギャップに惑わされることなく、より現実的にアプローチできると思う」

 ――過去3大会は正GKだった。今回は立場が変わる可能性も。
 「今までと同じように試合に向けて準備するだけで、心境の変化はない。自分は10年大会で(川口)能活さんとナラさん(楢崎正剛)の姿を見た。2人の存在は自分の刺激になっていて、2人の行動を見ていたからこそ、今、自分が感じることは少なからずある」

 ――刺激とは。
 「自分は“妥協しない”をモットーにしている。今はベンチが多いが、毎日の練習は回せるし試合に同行できる。状況に甘えようと思えばいくらでも甘えられる。しかし、より高いレベルで高いパフォーマンスを表現するためにここにいる。この言葉は昔、ナラさんがインタビューで答えていて、それが心に刻まれていた。能活さんのプレーも鮮明に覚えている。2人の言葉や姿勢がエネルギーの一つになっている」

 ――39歳でW杯出場は想像していたか。
 「全く想像していない。18年大会までの4年間は無所属になったり、チーム内の定位置争いだったり、とにかくいろいろ起こった。燃え尽きたというか、前回大会後に次を目指してまた4年間やる自信はなかった」

 ――年齢を重ねて衰えは感じないか。
 「自分が感じる分にはコンディションはいい。食事は以前と同様に気にしていて、生活リズムも変わっていない。例えば若い選手と同じ量のトレーニングで維持していても、自分は落ちていく一方になる。常に良くなるように気を付けていて、今夏のキャンプに入る際のテストの数値も昨夏を上回っていた」

――前回大会からの変化はあったか。
 「サッカーのために切り離したものや、強いこだわりは多かったと思う。ここ4年ほどで(プライベートとの)境目は曖昧になった。これまでは試合当日、体を動かすから、そこに子供を一切入れたくない感覚が強かった。今は試合が夜開催なら当日の朝に子供と自転車に乗って出かけたり、サッカーをしたりする。子供と一緒にいられて、楽しくて、体も動かせる。いいことずくめです」

 ――40代目前で挑み続けられる原動力は。
 「チャンスをもらえているから、挑戦しないわけにはいかない。ストラスブールは欧州リーグを目指せるクラブ。ここでも十分にできるという手応えはある。試合に出ておらず、周囲は環境を変えたり違う道があると思うかもしれないが、(前所属の)メスで“もっとやれる”と感じた感覚を表現するために今は我慢するしかない」

 ――トップランナーとしての自負もある。
 「日本人GKはレベルが低いとか海外では通用しないとかいわれるが、もっとやれると常に見せ続けたい。自分は3回もW杯に出させてもらった。一番前を走ってる人が挑戦しなかったら、これから日本を背負うGKや若者に失礼。最高峰に自分が挑み続けなければ、背中を見てくれているGKは育たない」

 ――大ベテランの域に達した。終着点はまだまだ先になるか。
 「どこに着地したらいいんですかね(笑い)。終わりを考えたことはないが、体がぼろぼろになるまでは嫌かな。プレーできるうちに辞めたい。自分が本当に“楽しい”と感じるうちに引退したら、その先もサッカーを楽しめると思う」

 ≪リーグ戦出場0も厚い森保監督の信頼≫川島は18年W杯ロシア大会後の同年8月にフランス1部ストラスブールに加入し、20~21年シーズンは24試合に出場したものの、昨季は出場1試合、今季はここまで出場がない。日本代表では3月29日に行われたW杯アジア最終予選のベトナム戦で今年初出場を果たし、6月10日の国際親善試合ガーナ戦でも先発した。先発は減ったが、W杯アジア2次予選、最終予選の計18試合でベンチに入らなかったのは1試合のみ。森保監督の信頼は厚い。

 ≪最多4大会出場並べるか≫日本代表でW杯最多の4大会(98、02、06、10年)に招集されたのはGKの川口能活と楢崎正剛の2人。10、14、18年と3大会連続で招集されているGK川島とDF長友は、今回メンバー入りを果たせば最多に並ぶ。通算出場試合数では、川島、長友が最多の11試合に出場しており、記録更新に期待がかかる。

 ◇川島 永嗣(かわしま・えいじ)1983年(昭58)3月20日生まれ、埼玉県与野市(現さいたま市中央区)出身の39歳。浦和東高から大宮に入団し、名古屋、川崎Fを経てベルギーのリールセへ海外移籍。Sリエージュ、スコットランドのダンディーU、フランスのメスを経て18年8月にストラスブールに加入した。J1通算130試合。国際Aマッチ95試合出場。1メートル85、82キロ。利き足は右。

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