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塚田 あと一歩も銀…攻め続けた結果と納得

[ 2008年8月16日 06:00 ]

女子78キロ超級で獲得した銀メダルを手に笑顔を見せる塚田真希選手

 【北京五輪・柔道】女子78キロ級で連覇を狙ったアテネ五輪金メダリストの塚田真希(26=綜合警備保障)は、決勝の残り8秒でトウ・ブン(中国)に逆転の一本背負い投げを食らい、銀メダルに終わった。05年世界選手権で完敗、昨年の世界選手権でも敗れた世界最強女王との決勝。相手への大声援の中、最後まで勇敢に立ち向かい、あと一歩で悲劇的な負け方をしたが、表彰式では晴れやかな表情を見せた。

 1度乾いた塚田の涙が、2度とこみ上げることはなかった。「もうちょっとだったけど、結果だから。勝負に勝ちたいというより、自分の全部を出すんだ、という感じでしたから」。全部を出した決勝。地元の英雄・トウ・ブンに猛然と襲いかかり、有効を奪った。それでも守らず、前に出た。しかし、残り8秒。一本背負いに体が浮き、逆転負け。「勝負した結果だから。あそこで前に出るのは仕方がない」とうっすら笑みまで浮かべた。
 アテネ五輪は、自分を信じてくれた人のために戦った。02年に亡くなった父・浩さん(享年47)、家族、監督、コーチ、スタッフのため。「9割がラッキーの金メダル」と振り返る。しかし、北京は「自分のためにやりたいという気持ちでいっぱい」だった。自分のため。塚田をその気持ちにさせたのが、ジュニア時代から意識していたという、トウ・ブンの存在だった。
 05、07年と世界選手権で連敗。特にアテネ五輪翌年の05年は「何にもできずに負けた」。過去全敗。中国遠征中に練習をした際、塚田が投げて下敷きになったトウ・ブンに引っかかれ、流血したこともある。「私は強いのよって感じ。完全に見下してくる」。それが塚田の闘志にも火をつけた。「そこまでやるかなと思った。私もルールの上で鬼になりたい」と誓った。
 宿敵対策として、東海大の男子学生を練習パートナーに指名。東海大浦安高への出稽古では、脱水症状を起こすまで組み合った。「自分自身が壁を感じていた」。その壁を破るために、何でも試みた。6月には畳の間に足の指が入り、左足親指が裂けるケガも負ったが「(天に)試されているんだ」と、逆に気持ちを奮い立たせた。
 「きょうは、相手どうのこうのより“自分、いいんじゃないの”って感じでした」。この日はくしくも、北京五輪最終選考会を最後に引退した最も尊敬する先輩、薪谷翠さん(ミキハウス)の誕生日。長年、女子最重量級を支えた薪谷さんに「全力で戦ってきたよと伝えたい」と汗をぬぐった塚田は「先は考えられないけど(トウ・ブンとの)差は縮まった感じですね」とさわやかな表情で会場を後にした。

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2008年8月16日のニュース