天国の愛馬の分まで グロンと大一番に挑む青木師

[ 2023年12月6日 10:35 ]

マイネルグロンで東京ハイジャンプを制した石神(左)と青木師(左から2人目)
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 日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」は、美浦取材班の高木翔平(33)が担当する。10月に東京ハイジャンプを制し、暮れの中山大障害(23日、中山)に向かうマイネルグロンをピックアップ。初のタイトルを獲得した青木孝文師(42)に話を聞いた。

 いつも明るく、ポジティブな印象が強い青木師。自然と周りに人が集まる“愛されキャラ”だ。10月15日、開業7年目で訪れた待望の瞬間。愛馬マイネルグロンが3連勝で東京ハイジャンプを制し、これが厩舎にとって初のタイトルとなった。レース後は検量室から何人もの調教師、騎手が出てきて祝福。同師は「本当にうれしかった。人と人とがつながっての勝利だったと思います」と目尻を下げた。

 競馬好きで、高校卒業後に馬の世界に飛び込んだ師。19歳で就職したビッグレッドファームでとことん馬と向き合い、その後に進む助手、調教師としての礎をつくり上げた。そして当時、同牧場で身近な存在だったのがマイネルグロンの母マイネヌーヴェル。師は「03年フラワーCを勝ったし、凄くいい動きをするなと思っていました。その子供で勝てたのは凄くうれしい。今(グロン)の担当をしてくれているのも当時の先輩。ほんの少しではありますが、古巣に恩返しできたのがうれしいですね」と語った。

 また、師にはもう一頭、忘れられない馬がいる。その後、美浦トレセンで働き出し、伊藤正徳厩舎で初めて担当したのがカナエカイウンという馬だった。障害転向後は安定した競馬を続け、05年京都ジャンプSで重賞に初挑戦。師は自信を胸に現地で見守ったが、不運にも障害でバランスを崩して転倒。二度と自分の元に帰ってくることはなかった。「本当につらい出来事でした。だから重賞初勝利が障害というのはどこか不思議だなと思うし、ドラマを感じてしまいます」と当時の愛馬を思った。

 既に美浦トレセンに戻って入念な調整を続けているマイネルグロン。好メンバーの前走を堂々と好位から押し切り、中山大障害を勝てば最優秀障害馬の称号も見えてくる。師は「正直、前走はいっぱいには仕上げていなかったので“ここで勝つのか!?”という驚きの方が大きかった。(障害は)アクシデントが多いレースだというのは誰よりも分かっているつもり。まずは無事に走り終えてほしい」とエール。多くの縁に支えられてたどり着いた大舞台。青木厩舎陣営とマイネルグロンの戦いが今から楽しみだ。 

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