【NHKマイルC】ウンブライル90点 名画級の美麗シルエットで混戦に断

[ 2023年5月2日 04:50 ]

鈴木康弘氏「達眼」馬体診断

ウンブライル
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 混戦に断を下すのは美の力だ。鈴木康弘元調教師(79)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第28回NHKマイルC(7日、東京)では昨年の朝日杯FS優勝馬ドルチェモアと共にウンブライルをトップ採点した。やや低調なメンバーの中で達眼が捉えたのはウンブライルの名牝の相。非凡な才能を感じさせる美しいシルエットだ。

 ゴールデンウイーク中は各地の美術館、博物館で企画展が開催されています。馬の博物館(横浜)の春季特別展「浮世絵美人と馬」など馬の名画と出合える展示も多い。そんな絵画の額縁から抜け出してきたような美しい姿を見せるのがウンブライルです。気品漂う輪郭。奇麗に抜けた首差しから背中、腰にかけて流麗なラインを描いています。前後肢の絶妙なバランス。大きなストライドを生む肩の滑らかな傾斜。名牝の相とでも呼ぶべきか。非凡な素質を感じさせるシルエットです。

 今年のNHKマイルCはいささか低調なメンバー構成。体つきを見ても、これは凄い!と、訴えかけてくる馬がいない。どの馬も物足りなく映ります。ウンブライルにしても発展途上。全体にまだ緩さが残っています。牝馬とはいえ、トモの筋肉量は多くない。これから鍛えていく中で筋肉を増やし、もっとパワーアップしてほしい。そんな課題を残しているとはいえ、美しい輪郭に大きな可能性を感じるのです。

 ドルチェモアのような、ごついマイラー体形のライバルとは対照的なしなやかな体つき。薄くても柔らかい筋肉がしなやかな印象を与えているのです。疲れのたまりづらい柔軟な筋肉に加えて背中と腹下にはゆとりがあります。マイルよりも中距離適性を感じさせる体形。5年前のマイルCSを優勝した全兄ステルヴィオ以上に距離は持つでしょう。

 顔つきはまだ幼い。特に目には集中心が欠けて散漫に映ります。前走・ニュージーランドT(2着)時にブリンカーを初着用したのもレースに集中させるためだったのでしょう。気ままな娘のような目を見れば矯正用馬具の装着も納得できます。

 毛ヅヤの良さはメンバー屈指。鹿毛の被毛が春の陽光を受けて赤褐色に輝いています。タテガミから蹄の先まで行き届いた手入れにも好感が持てます。

 「真の美しさは内からみなぎり、目からあふれるもの」とはイタリアの大女優ソフィア・ローレンの名言。イタリア北部のウンブライル峠から命名された、名画のようにエレガントな牝馬も真の美しさを備えてほしい。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の79歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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2023年5月2日のニュース