【エリザベス女王杯】沖田哲夫氏 日高の星・イズジョーノキセキに期待 小さな牧場に夢を

[ 2022年11月9日 05:30 ]

坂路を駆け上がるイズジョーノキセキ(撮影・亀井 直樹)
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 秋のG1新企画「時の人」。エリザベス女王杯はイズジョーノキセキを生産した沖田哲夫氏(72)にスポットを当てる。前走・府中牝馬Sで46年越しの重賞初勝利を達成。当時の心境、日高の星として挑む大一番への意気込みを聞いた。

 ――競走馬を生産するようになったきっかけは?
 「45年前に父からこの仕事を引き継ぎました。当時はどんな動物でも生産すればもうかる時代でしたからね。今、所有している繁殖牝馬は7頭。個人の名義で、ほそぼそとやらせてもらっています」

 ――イズジョーノキセキの前走・府中牝馬S(1着)はどうみたか?
 「実は45年間やってきて、生産した馬がグレードレースを勝ったのが初めてでした。最初は掲示板に載ってくれればいいなと思って見ていた。ソダシがいるレースで12番人気でしたからね。それがあれよあれよと直線で伸びて勝ってくれた。うれしかったですね。長いこと続けていれば報われることもあるんだなと思いました」

 ――同馬はどういう子馬だったのでしょう?
 「病気一つしない手のかからない子でしたね。言葉は悪く聞こえるかもしれないけど“普通”の馬でした。見どころがあったのが新馬戦(中京芝1600メートルで6着)。泥んこの馬場でしたが、進路を見つけたら凄い脚を使った。負けはしたけど、これはやれるんじゃないかと思いましたね」

 ――その後も安定した走りを続けた。
 「着外(6着以下)が3回しかありませんからね。デビュー戦と(昨年、古馬重賞初挑戦で7着だった)マーメイドS。難波S(今年4月、7着)は最下位に負けたけど、フケ(発情期)が来ていて迫力がありませんでしたからね。初めてG1に挑んだ昨年のエリザベス女王杯で5着に頑張ったのには驚いたし、本当に堅実というタイプ。不思議とクラスの壁を感じさせません」

 ――今年のエリザベス女王杯も楽しみですね。
 「外国馬(マジカルラグーン)が来日して3冠馬のデアリングタクトがいる。今年は秋華賞で活躍した馬たちがジャパンCではなく、こちらにやってきたので凄いメンバーになってしまった。昨年の西宮S(2着)ではジェラルディーナに完敗した経験もありますから。挑戦者の立場で自分の競馬をしてくれたらうれしいですね。岩田康ジョッキーが(騎乗停止により)乗れなくなったのは残念ですが、ルメールさんが空いていたのは運があるのではないでしょうか。また穴党の皆さんのお役に立てればいいのですが(笑い)。もう、一ファンとして応援ですよ」

 ――イズジョーノキセキの活躍に日高の馬産地も勇気をもらえる。
 「前走の後、ある調教師さんに“沖田さんくらいの小さい牧場はグレードレースを勝てずに終わることの方が多いんだから幸せだね”と言われたんです。確かに、と思わされましたね。大手の牧場さんが多くのレースを勝つ中、日高の牧場が重賞を勝つのは宝くじが当たるようなもの。昔はオグリキャップのような生い立ちの馬にみんなが興奮した。この馬が頑張ることで、ほそぼそと頑張っている小さな牧場に夢を与えられるんじゃないかな、という気持ちはあります」

 《坂路軽めに調整》イズジョーノキセキは府中牝馬Sそのもの。火曜朝は坂路を流した。米盛助手は「オーバーワークにならないよう調整しています。体も少し成長したかなと思います。去年(5着)は落鉄もあって力を出し切れなかった。ここが最大目標でしたし、一番いい状態で本番を迎えられたら」と力を込めた。昨年は0秒4差と善戦。あれから1年。雪辱のリターンマッチ、進化した姿を見せる。

 ◇沖田 哲夫(おきた・てつお)1950年(昭25)1月27日生まれ、北海道出身の72歳。イズジョーノキセキの他にはポンデザムール、ロトヴィグラス、地方で活躍したフジケンコスモスなどを生産。

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