きさらぎ賞で思い出すダンスのドラマ
【競馬人生劇場・平松さとし】今週末、きさらぎ賞(G3)が行われる。1996年のこのレースに出走したのがダンスインザダーク。管理していたのは橋口弘次郎調教師(引退)だった。
「兄姉も走っていたしこの馬も入厩時から抜群に動きました。ダービーを狙える馬だと思いました」
その見解に誤りはなく武豊騎手を背に新馬戦をフラつきながらも楽勝。しかし、その後、立ちはだかったのがロイヤルタッチだった。2戦目でこの馬に負けると、3戦目のきさらぎ賞でも連敗。ダンスインザダークは首差2着に敗れた。
「ただロイヤルタッチが良いモノサシになってくれました。これは2頭ともクラシックで勝ち負けできる器だと思えたのです」
だから皐月賞(G1)も期待した。ところがレース直前の週によもやの熱発。回避せざるを得なくなり、プリンシパルSに矛先を変更した。
「フサイチコンコルドが相手だと思ったら、今度は向こうが熱発で回避しました」
結果プリンシパルSを快勝してダービーへ向かった。
「当時は私も若くて“出走に至れば今度こそ勝てるでしょう”などと言っていました。これでは勝てるわけがありませんよね」
後に橋口弘次郎師は苦笑いしてそう語る。ダービーではフサイチコンコルドに首だけ差されて2着に敗れたのだ。
「秋は何とか雪辱したい一心でした」
京都新聞杯(G2)を勝って菊花賞(G1)へ向かった。ここでまたもフサイチコンコルドやロイヤルタッチとぶつかることになった。今度は慎重になって大きなことを言わなかった調教師だが、本馬場入場時、鞍上の武豊騎手から思わぬひと言を耳にした。
「ユタカ君が“今日は勝ちます”と言いました。彼の口からそんな発言を聞くのは初めて。並々ならぬ執念を燃やしていると感じました」
結果、最後の1冠をダンスインザダークは勝利。雪辱した。さて、今年のきさらぎ賞はどんなドラマが待っているだろう。 (フリーライター)
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