【スプリンターズS】タワー差し切りV!史上初の“夏秋スプリント王”誕生

[ 2019年9月30日 05:30 ]

2019年のスプリンターズSを制したタワーオブロンドン(左)。(撮影・郡司 修)
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 芝スプリント界に新たな絶対王者が誕生だ。秋G1開幕戦の「第53回スプリンターズS」が29日、中山競馬場で行われ、2番人気のタワーオブロンドンが直線で鋭く伸びて差し切り勝ち。G1初制覇を飾った。サマースプリントシリーズ王者の勝利は初めて。管理する藤沢和雄師(68)は97年タイキシャトル以来2勝目で、最多記録を更新するJRA・G1・29勝目。鞍上のクリストフ・ルメール(40)は同レース初勝利。フィエールマンで挑む凱旋門賞(10月6日、仏パリロンシャン)へ弾みをつけた。 レース結果

 超一流騎手と名伯楽がタッグを組んで育ててきた逸材が、ついに手にしたG1の勲章。主戦のルメールは検量室前でタワーオブロンドンから下りると、待ち受ける藤沢和師とガッチリ抱擁を交わした。「今日で一番強いスプリンターになれた。彼のリミットが、まだ分からない」。すっかり滑らかになった日本語でパートナーの走りを絶賛した。

 パドックでまたがった瞬間、鞍上は勝利を確信していた。中1週でレコードVを飾ったセントウルSから中2週でも「歩き方がスムーズでリラックス。完璧だった」と気配は抜群。8番枠から発馬こそ速くなかったが、中団でスムーズに折り合うと、3~4角で外から進出。人気を二分した2番枠のダノンスマッシュを内に閉じ込める形で直線を向き、堂々と抜け出した。ルメールは「ダノンをマークしたかったが、彼のポジションは良くないと思って外へ行った」。8番はこれで17年レッドファルクス、18年ファインニードルに続き3連勝。藤沢和師も「あそこで大丈夫と思った。その辺が枠の差。もし内なら…」と、勝負を分けたポイントに枠順を挙げた。

 藤沢和師にとっては特別な思いがこみ上げる勝利だった。やはり同師が管理したタワーオブロンドンの祖母シンコウエルメスは、致命的なケガから奇跡的に一命を取り留めて繁殖入り。その質問が会見で飛ぶと名伯楽は声を詰まらせた。「(祖母は)25年前にアイルランドから来たが、事故で…。素晴らしい馬が出て良かった。感謝しています」と感無量の表情を見せた。

 次走については「オーナーと相談して」と明言を避けたが、香港などの海外遠征に、マイルCS(11月17日、京都)も視野に入る。指揮官は「ジョッキーは早い段階から“短いところがいい”と。彼の言うことが正しかったが、今度は“千六まで持たせて”と言うよ」とジョークで笑わせた。

 優勝会見を終えたルメールは、そのまま母国フランスへ旅立った。目的はもちろん、今週末の凱旋門賞にフィエールマンで挑むためだ。「G1を勝てて、ちょっと安心した。飛行機の中でよく眠れそう(笑い)。興奮するね。応援してください」。日本馬だけではなく、ルメール自身も母国の最高峰G1である凱旋門賞は未勝利。最高の形で海を渡り、悲願成就に挑む。

 ◆タワーオブロンドン 父レイヴンズパス 母スノーパイン(母の父ダラカニ)牡4歳 美浦・藤沢和厩舎所属 馬主・ゴドルフィン 生産者・北海道日高町ダーレー・ジャパン・ファーム 戦績14戦7勝 総獲得賞金3億9747万円。

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