【阪神JF】“非凡な大器”シェーン90点!しなやかさ魅せる

[ 2018年12月4日 05:30 ]

トモの筋肉が柔軟でしなやなかなシェーングランツ(撮影・郡司 修)
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 姉を超える未完の女優か、それとも、美貌の女優か。鈴木康弘元調教師(74)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第70回阪神JF(9日、阪神)ではシェーングランツとダノンファンタジーを1位指名した。一昨年の2歳女王ソウルスターリングと比較した達眼に映ったものとは…。その立ち姿を女優になぞらえながら解説する。

 昭和の時代から姉妹そろってヒロインを務める女優が世代ごとに登場しました。私のような戦中生まれ世代なら、倍賞千恵子&美津子。少し下って団塊の世代(40年代後半)では音無美紀子&真喜子。断層の世代(50年代)は真野響子&あずさ。新人類世代(60年代前半〜70年代初め)なら石田ゆり子&ひかり。後述する舞台女優の井藤湊香&霧矢大夢。最近のゆとり世代(87年以降)では広瀬アリス&すずが今最も旬な女優だとか。ともあれ、うり二つの姉妹もいれば、似て非なる姉妹もいます。

 ソウルスターリング&シェーングランツ姉妹は果たして似ているのか。姉が2年前の阪神JFで優勝した時の写真と比べてみました。470〜480キロ前後の体重はほぼ同じ。どちらも青鹿毛の被毛が黒光りしています。姉の阪神JF時同様、具合がすこぶるいい証拠。体形は全然似ていません。姉よりも背中と腹が短い。姉はフランケル産駒ですが、こちらはディープインパクトに父親が替わったため短背短腹の体形になったのです。

 馬体のラインはもっと違います。姉は2歳暮れの時点で名女優のような気品を漂わせるバランスの整った姿でした。全ての部位が大きさ、角度とも過不足なく滑らかにリンクした機能美あふれる骨格。各パーツが完璧に収まったジグソーパズルみたいなつくりでした。対照的に妹の体つきは粗削り。姉のこの時期と比べてキ甲(首と背の間のふくらみ)が抜けていない。飛節の角度は浅めなのに、膝は妙に大きい。尾は体格と不釣り合いなほど太い。各パーツが収まりきらない未完成のパズルです。

 ところが、推進力の源泉となるトモ(後肢)の筋肉は姉以上に柔軟でしなやかに映る。父ディープインパクトの影響でしょう。そこだけ自己主張するように異彩を放っている。非凡な才能を示すトモが他の部位と整合していないため粗削りに映りますが、整っていない分だけ姉以上の伸びしろを感じるのです。

 劇団四季で活躍した井藤湊香の妹で、宝塚の元トップスター・霧矢大夢は名作ミュージカル「マイ・フェア・レディ」のヒロインを務めました。ロンドン下町の花売り娘が見違えるように麗しい貴婦人へ変ぼうする成長物語。姉と共にG1のヒロインを任されたシェーングランツも完成した時にはどれほど洗練された名牝に変わっているか。平成最後の2歳戦線に出現した未完の名女優です。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の74歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94〜04年に日本調教師会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。

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