【菊花賞】ジェネラーレウーノ100点 まさにステイヤーの見本

[ 2018年10月16日 05:30 ]

ジェネラーレウーノ
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 キタサンブラックから最強ステイヤーのたすきを受け継ぐのは…。鈴木康弘元調教師(74)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第79回菊花賞(21日、京都)ではジェネラーレウーノを1位指名した。達眼が捉えたのは、戦後日本を代表するマラソンランナー・君原健二氏ともダブって映る筋肉と首の姿勢。皐月賞3着後はダービー大敗、秋初戦のセントライト記念1着。キタサンブラックと同じ蹄跡で菊の大輪をつかむ勢いだ。

 ジェネラーレウーノとブラストワンピース。今菊花賞で人気を集める東の両雄ですが、その体形は対照的です。ワンピースが陸上の短距離ランナーを思わせる筋肉質の馬体なら、ウーノは無駄な肉をそぎ落としたマラソンランナー。ちょうど50年前のメキシコ五輪(68年)で日本人初の銀メダルに輝いた君原健二氏を思い起こします。首を鶴のように曲げながら加速するウーノの走法は、首を傾けた君原走法のように個性的。「あの走法は苦しくなったときのあがき」と本人は語っていたそうですが、ウーノの鶴首は気迫を示すしぐさ。首を曲げながら長距離馬らしい体を伸縮させ、君原氏のようなしぶとく粘り強い走りを見せてくれる。

 背中も胴も長いステイヤーの見本のような体形。総じて短距離ランナーは瞬発系の速筋と呼ばれる厚い筋肉が発達するためマッチョなボディーになる。一方長距離ランナーは遅筋という持久力のある薄い筋肉を付けるためスリムなボディー。今年の菊花賞有力馬ではグロンディオーズ、メイショウテッコン、タイムフライヤーも長距離型の体形ですが、ウーノが最もステイヤーらしい薄くて上質な筋肉を付けています。

 長距離馬らしい穏やかな表情にも好感が持てる。顔つきはシャープではないが、耳にも尾にも力みなし。3000メートルを乗り切るのにちょうどいい精神状態でしょう。皐月賞3着からダービー大敗、セントライト記念快勝を弾みに菊の大輪を咲かせたキタサンブラックと同じ臨戦過程ですが、悠然とした立ち姿もダブって映ります。どちらも一瞬のスピードがない代わりに、主導権を獲って平均ペースで押し切るスタミナ型。キタサンブラックのような首と脚が長い「キリン体形」ではありませんが、発達したキコウ(首と背中の間のふくらみ)も似ている。ダービー時よりも腹袋にボリュームが増したのはひと夏越しての成長力です。四肢を見れば、腱がしっかり浮き出ていて、とても丈夫。加減せずに調教を積める。タフな脚部もキタサンと同じです。

 君原健二氏は自著にこんな名言を残しています。「人生はよくマラソンに例えられるが、私はむしろ、人生は駅伝であると思う。前を走った者から、たすきを受け継ぎ、後に走る者につなぐ…」。馬名通り世代1番(ウーノ)の長距離資質を備える3歳馬がキタサンブラックから受け継ぐのは最強ステイヤーのたすきか。君原氏がメキシコ五輪のゴールを駆け抜けたのは50年前の日本時間10月21日、今菊花賞の当日です。 (NHK解説者)

 ○…関東馬ジェネラーレウーノは前走・セントライト記念で2番手から早めに抜け出し、1月京成杯に続く重賞2勝目。2走前のダービー16着から巻き返しに成功した。矢野師は「ダービーは先行争いをした皐月賞(3着)の影響が出ただけ。控えても競馬はできる馬だし、能力を見せてくれた」と評価。先週末の13日に早めに栗東へ移動。「スタミナはあるし、この馬の力を出せれば楽しみ」と手応えを得ている。

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の74歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94〜04年に日本調教師会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。

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