いつでも謙虚さ忘れない中舘英二という男

[ 2018年9月28日 05:30 ]

中舘師は騎手時代ヒシアマゾンとのコンビでG1・2勝
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 【競馬人生劇場・平松さとし】中舘英二師は84年に騎手デビューすると3年目にはアサヒエンペラーとのコンビで皐月賞、ダービーを共に3着。93年に出合ったヒシアマゾンとのコンビではエリザベス女王杯などG1を2勝した。

 しかし、その後、しばらく大舞台から彼の名は消える。通算1000勝した騎手には調教師の1次試験免許という特典があったため、それを目指した彼はひたすら裏開催で乗り続けた。

 「岡部(幸雄・引退)さんの競馬に対する姿勢、柴田(政人・現調教師)さんの迫力や中島(啓之・故人)さんの人間性など、たくさんの人から多くのことを学んだ」という殊勝な態度に加え、当時、敏腕エージェントとして知られた植木靖雄氏の手助けもあって年間100勝突破を6度、最終的に通算の勝ち鞍は1800を超えるまでに伸びた。

 しかし、“1000勝の特典”はなくなり、植木氏も51歳で早世すると、中舘騎手は自らの努力で難関の調教師試験を突破。2015年に厩舎を開業した。

 「植木さんがいなければ“騎手・中舘英二”はいませんでした。本当は調教師としての私の姿も見ていただきたかったし、一緒に仕事をしていきたかったです」

 開業が決まった当初、そう語っていたことを思い出す。もっとも、感傷に浸っていただけではない。中舘新調教師は次のようにも語っていた。

 「まずは地道に足元を固めてしっかりやっていこうと考えています」

 その姿勢は騎手時代と同じだろう。先述した通り一度は表舞台に姿を現さなくなったと思えた中舘騎手だが、07年にはアストンマーチャンに騎乗し、スプリンターズSを制覇。久々のG1勝利を記録した。

 「自分は晴れ舞台にはもう立てないと思っていました。関係者の皆さんには感謝しかありません」

 しんみりとそう語った表情が忘れられない。

 今年のスプリンターズSはその07年と同じ9月30日に行われる。中舘師のような態度をとれる人に勝ってもらいたいものだ。

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2018年9月28日のニュース