【朝日杯FS】ミスエルテ100点!ゆとりある自然美に満ちた姿

[ 2016年12月14日 05:30 ]

ゆとりある自然美に満ちた姿のミスエルテ
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 今週もフランケルの娘が主役だ。鈴木康弘元調教師(72)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第68回朝日杯FS(18日、阪神)では牡馬勢に挑むデビュー2連勝中のミスエルテを唯一満点評価した。達眼が捉えたのは名牝の相。先週の阪神JFでフランケル産駒初のG1優勝を飾ったソウルスターリングと比較しながら、馬体の可能性を探った。

 一流種牡馬は自身の姿を全面に伝えない。ノーザンテースト、サンデーサイレンス、ディープインパクト…。その産駒は父とともに母(繁殖牝馬)の外見も受け継いでいます。逆に自らの姿とそっくりの子を出す種牡馬は成功しません。例えば、ハンターコム。放牧地にいる子供をひと目見ただけで父親が分かるほどでしたが、大成しませんでした。

 フランケルの娘は果たしてどうか。ソウルスターリングとミスエルテ。初年度産駒2頭の写真を並べてみると…。どちらも父親に似ていない。娘同士も全く違う体つきをしています。ソウルは定規とコンパスを使ってデッサンしたような奇麗なラインを描いています。一方、スエルテは道具を使わず、フリーハンドで描いたようなふんわりしたライン。ソウルのようにはあか抜けていない代わりに、余裕というか、ゆとりがあります。だから、体重以上に体を大きく見せる。馬体のゆとりは成長力を生み出すと同時に各パーツの使い方もスムーズにしてくれます。

 別表で2頭の各部位を比較してみました。体の隅々まで測ったようにバランスの取れたパーツを備えているソウルと対照的に、こちらには注文を付けたいパーツがたくさんあります。前肢のつなぎが立ち気味、飛節の角度が少し浅め、腰の位置が後ろ、脚、特に膝下が長め。こういう体形だと硬く映るものです。ところが、スエルテはとても柔軟な印象を与えます。全身に柔らかい筋肉をまとっているからです。両馬に共通しているのは優れたトモ(後肢)と肩。筋肉で発達したトモが推進力を生み出し、しっかり寝た肩が大きなストライドをつくります。走るために最も重要な部位を完璧な形で備えている。キ甲は2頭とも未発達。本格化するのは3歳以降です。

 レディーに対して大変失礼ですが、顔を比較すると…。ソウルはキリッとした顔立ちですが、こちらはボンヤリ顔。ソウルよりもずぶとい気性かもしれません。顎もソウルより張っている。よく食べるのでしょう。

 いずれは直接対決するフランケル産駒2頭。甲乙は付けられません。ソウルが均整の取れた機能美を貫いた体形なら、こちらはゆとりある自然美に満ちた姿。朝日杯FSの牡馬勢を圧倒しています。それにしても、娘たちは似ていません。一流種牡馬は自身の姿を全面に伝えない…。フランケルは14戦無敗の競走成績にふさわしい種牡馬成績を残していくのでしょう。(NHK解説者)

 ◆馬名の由来 ミ・スエルテ(Mi Suerte)はスペイン語で「私の幸運」の意味。母ミスエーニョ(Mi Sueno=私の夢)からの連想。

 ◆鈴木 康弘 1944年(昭19)4月19日、東京生まれの72歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し、東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93~03年には日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなどで27勝。

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