【朝日杯FS】エアスピネル100点 武豊「全冠」託せるパワフル臀部

[ 2015年12月16日 05:30 ]

パワフルな臀部で鈴木氏を魅了したエアスピネル

 2歳王者にふさわしい神童だ。鈴木康弘元調教師(71)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第67回朝日杯FSではエアスピネルをイモータルと共に満点採点した。父キングカメハメハ、母の父サンデーサイレンスの馬体の長所を兼備するスピネルが、武豊のJRA全G1制覇の偉業をかなえる。

【朝日杯FS】

 エアスピネルのスピネルとは、タイに伝わる竜の形をした馬だとか。タイの長編叙事詩プラ・アパイ・マニーでも描かれた神通力を持った竜馬「ニン・マンゴーン」のことでしょう。仙人から授かった魔法のつえを持つ王子スサコーンを背に、竜のごとく海を渡り馬のごとく大地を蹴る竜馬。タイ人なら誰もが知っている伝説のスーパーアイドルホースだと聞きました。

 日本のスピネルもスーパーホースになる可能性を秘めています。父キングカメハメハ譲りの豊富な筋肉量と、母の父サンデーサイレンスから受け継いだ柔軟性を兼備している馬体。ひと目で魅了されました。特に臀部(でんぶ)が際立っています。厚みだけではなく丸みもある。筋肉量と柔軟性が凝縮された臀部はトモ(後肢)全体をパワフルに動かす原動力になります。レース中にぶつかってバランスを崩しても立て直せることができる。馬群でごった返す大舞台で何より頼りになる臀部です。全体のバランスも取れており、トモを受ける飛節も優れている。顔つきもりりしい。

 課題を挙げるなら、キ甲(首と背の境の隆起した部分)がまだ抜け切らず、膝下が固まっていないことでしょう。馬が若いのです。成長段階にありながらのデビュー連勝は、筋肉量と柔軟性を兼備する2歳馬の才能でしょう。

 タイの「ニン・マンゴーン」が竜の前肢と馬の後肢を持つ神獣だとすれば、エアスピネルはキンカメとSSの長所を併せ持つ神童…。ちょっと褒め過ぎでしょうか。魔法のつえを持ってニン・マンゴーンに乗る王子スサコーンのように、JRAの王子も魔法のステッキを使うか。冗談はさておき、武豊騎手がG1完全制覇の偉業を託すに足りる馬体なのは確かです。 (NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘 1944年(昭19)4月19日、東京生まれの71歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93~03年には日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなどで27勝。

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2015年12月16日のニュース