奥村武調教師 愛犬クマゴロウと心通わせ競馬界へ

[ 2014年3月7日 05:30 ]

 「忘れられない馬は、活躍した馬より命を落としてしまった馬」。今月1日に開業したばかりの奥村武師(37)。思い出の一頭は、国枝厩舎時代に助手として担当したアパパネでもマツリダゴッホでもなかった。「G1勝利は馬にとっては通過点。その先がある。でも、死なせてしまったら、そこで終わってしまう」

 身内に競馬関係者はいない。「調教師になれたのは全て偶然から生まれた縁」。最初のきっかけは小学3年生で飼い始めた犬のクマゴロウ。動物が苦手だったのに、目を見れば心を通わせられた。それで動物に興味を持った。次は中学1年の時、たまたまテレビで見たジャパンC。ホーリックスとオグリキャップの叩き合いはあまりに衝撃だった。続いて芝浦工大工学部在学中に読んだ平松さとし著「藤沢和雄の調教論」。藤沢和師に勝ちたい、と調教師になることを決意した。そして国枝師との出会いで自分が変わった。仕事で仲間と衝突することをいとわない性格だったが「信頼して仕事を任せるのも仕事」とめったに怒らない師に怒られた。

 「厩舎経営は一人じゃ何もできない」。馬と人を重んじる若き師の挑戦は、始まったばかりだ。

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2014年3月7日のニュース