【皐月賞】コディーノ解禁!闘争本能かき立てる反撃の併せ馬

[ 2013年4月12日 06:00 ]

併せ馬で躍動感あふれる動きを見せるコディーノ(手前)

 名伯楽が勝負手に出た。牡馬クラシック第1弾「第73回皐月賞」(14日、中山)の木曜追いが11日、美浦トレセンで行われ、有力馬コディーノが今年初めて併せ馬を敢行。これまで気性面を考慮して“並ばない調教”を繰り返してきたが、ついに解禁。闘志を極限まで高め、藤沢和雄師(61)悲願の牡馬クラシック制覇に挑む。同レースは12日、ウインズ新橋、後楽園で午後2時から7時まで金曜発売を行う。

【皐月賞】

 封印を解き放った。ついに勝負手を打った。夜来の降雨で重くなったWコース。コディーノは3馬身先行したフラムドグロワール(3歳オープン)との差を詰めると、直線半ばで一気に並びかけていった。黒鹿毛の馬体を小気味良く躍動させ、僚馬の内にピタリと張り付いた。「まだだ」。前に出ようとする本能を内に秘めつつ、横山典の手綱に従った。完璧な制御。2頭はゴール板を過ぎても減速せず、鼻面をそろえたままの併走は向正面(ゴール後400メートル)まで続いた。1000メートル70秒6というタイムだけでは計れない迫力があった。

 「久々に併せ馬で、いい追い切りができた。落ち着きがあってコントロールが利いていた」。藤沢和師の表情に満足そうな笑みが浮かぶ。「ゴール前後の合計400メートルを併せるよう指示した。向正面まで続けたのはジョッキー(横山典)の判断。それだけ余力があったんだろう」と続けた。

 今年初めての併せ馬だった。昨年の朝日杯FS。パドックからイレ込み、レースでは不覚にも3コーナーで一気に加速。粘るロゴタイプを首差捉えられなかった(2着)。その時以降、テンションの過剰な上昇を防ぐため併せ馬を封印した。僚馬をペースメーカー代わりに前に置いても、並ばない調教を繰り返した。それが一転、火花散るような併せ馬。過剰に興奮しないだけの精神力を身に付けたと藤沢和師が判断した末の決断だった。

 G1最多勝(21勝)を誇る名調教師も牡馬クラシックは無冠。2年前、なじみの記者を集めた食事会で「俺は藤沢さんが牡馬クラシックを獲る姿を見たい」とベテラン記者に言われ、師はしみじみとこう語った。「そう言ってくれる人が最近多いんだ。以前の俺はクラシックより古馬G1、それが馬のためと言ってきた。ただ、周囲の期待に応えようと努力することも大事と思うようにもなった。ここ数年が勝負だろう。獲りにいくよ」

 責任感の強い調教師だ。「朝日杯FSゴール前のスタンドからの悲鳴は今でも忘れられない」と言う。単勝1・3倍の圧倒的1番人気に応えられなかった一戦。痛恨事として師の胸に突き刺さっている。だから、慎重過ぎると思われるほどに万全を期し、勇気を持って勝負手を打った。「牡馬クラシックは残念な結果ばかり。それでも懲りずに応援してくれる人たちに恩返ししたい」。イタリアサッカー界の至宝と呼ばれた、ロベルト・バッジオ氏の愛称(弁髪)から、その名をもらった素質馬で、ついに名伯楽が牡馬クラシックのお立ち台に立つ時がきた。

 ▼併せ馬 調教で2頭以上の馬が並んで走ること。併走させることによって競走馬の闘争本能をかき立てる効果がある。その一方、落ち着きのない馬は興奮したりイレ込んでしまうため、1頭による「単走」で調教するケースが多い。藤沢和厩舎は「イン突き併せ馬」「3頭併せの真ん中突破」など斬新な併せ馬を考案してきた。

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