後悔と葛藤の日々…リルダヴァル陣営 骨折からの6カ月

[ 2010年4月24日 11:43 ]

皐月賞後のリルダヴァル

 ウマドル・桜井聖良が、皐月賞のレース後を取材。6着リルダヴァルの馬房を訪問し、名門・池江泰郎厩舎の片山調教助手に取材を敢行。第1弾ではレース直後の感想を紹介。第2回は野路菊Sで骨折発覚時の「思い」について聞いた。

リルダヴァル 最内枠に入った皐月賞で不安よぎった

 皐月賞を6着で終えたリルダヴァル。レース後の馬房を訪ね、その調教助手・片山さんにお話を伺いました。池江泰郎厩舎のみなさんの「思い」をここでは伝えたいと思います。

 2歳秋に出走した野路菊Sで、関係者を騒然とさせた末脚で快勝。その後、まさかの骨折。期待されていた1頭だっただけに、骨折のニュースを知ったとき、私も大きなショックを受けました。片山さんは当時の様子をこう振り返ります。

 「ほんとにね…。レースから帰ってきた次の日は普通に運動していたんですよ。腫れも痛みもなかったように感じた。でも、馬自身は、違和感があったと思うし、骨折してるぐらいだから、痛かったと思う。だけど、それを全く見せなかったんです。普通にしっかり歩いていて」。

 「(土曜に行われた野路菊Sを終えて)日曜日に他の担当している馬の競馬に行きました。厩舎に帰ってきてから、リルの様子はどんな感じかなと、馬屋を見に行くと、もう脚がパンパンに張っていて。どうして気付いてあげられなかったのかな。すごい可哀想なことをしてしまったと思いました」。

 私の脳裏に突き刺さる、そのひと言ひと言。想像以上の辛さ。リルは"故障して心配をかけてしまった"、片山さんは"もっと早く気付いてやれば…"。言葉を出さずとも互いに伝わる「ゴメンね」という思い。

 「強いんですよ。いろいろ小さなケガをすると、すぐ痛がって泣くタイプなのに、骨折の時はドーンと構えて、絶対気づかれないようにしっかり歩いていて。その時にこいつの精神面は相当でかいんだなと思いました」。

 6カ月の戦線離脱の間、ライバルたちは次々と華々しく活躍していきました。その姿を見た片山さんの心境は複雑だったそうです。リルがここにいれば…。葛藤の日々が続きました。

 「正直な話、たくさんの同じ世代の馬を見てきて、たくさんの馬が重賞を獲って、G1を獲っている。ましてリルが同じところを走り、負かした相手が重賞を獲ったりしているのを見ていて、ちょっと悔しかったです。リルだったら、こういう競馬だって、もしかしたら勝ってたかもしれない。想像の中での話でしたが、考えるだけですごく悔しかった」。

 話を聞いているうちに私の目から自然と熱いものがこみ上げてきました。気持ちが痛いほど伝わってきて、涙がとまりませんでした。

 野路菊S後は"化け物"とまで呼ばれたリルが、ようやく復帰したのは3月の毎日杯でした。脚元の不安との戦い、皐月賞まで続いた慎重を期した調教。やはり、ここでも様々な「思い」がありました。(つづく)(馬バカのウマドル・桜井聖良)

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2010年4月24日のニュース