ルメール魔術!!アマポーラ大胆先行V/エ女王杯

[ 2008年11月17日 06:00 ]

<エリザベス女王杯>リトルアマポーラ(左)が、カワカミプリンセス(右から2頭目)の追撃を振り切りG1初制覇。(空馬はポルトフィーノ)

 鮮やかな変ぼうを遂げたニューヒロインの誕生だ。「第33回エリザベス女王杯」が京都競馬場で行われ、3歳牝馬リトルアマポーラがG1初制覇を達成。鞍上のクリストフ・ルメール騎手(29=フランス)は、05年有馬記念(ハーツクライ)以来となるJRAのG1優勝。1番人気カワカミプリンセスは追い込み及ばず2着。3番人気に支持されたポルトフィーノがスタート直後に落馬、競走を中止するアクシデントがあった。

位置取りで明暗クッキリ/エリザベス女王杯

ポルトフィーノ落馬 武豊「なんでG1で…」

 これがルメールマジックだ。16番枠から絶妙のスタートを決めたリトルアマポーラは、難なく好位5番手を確保した。コスモプラチナが逃げて縦長になったが、向正面に入っても人馬の呼吸に乱れはなく、好ポジションをキープ。3角過ぎから仕掛け、直線入り口で先頭に立つと独走態勢。ゴール直前で空馬となったポルトフィーノに寄られるハプニングもあったが、鞍上は冷静にやり過ごして先頭でゴール板を駆け抜けた。
 「いいスタートを決めてグッドポジションを取ることができた。道中もリラックスして気持ちよさそうに走っていたね。追ってからの反応も抜群。最後もいい脚を使ってくれた」と満面の笑みで振り返ったルメール。会心の騎乗の裏には綿密な計算があった。春は後方待機から直線で追い込む戦法を得意としていたアマポーラ。だが、春のレースのVTRを「研究した」という名手は、ある点に注目していた。「最後に凄い脚を使うことは分かったが、スタートしてからゴールまで、常に最大限の力を出して走っているように見えた。追い切りに騎乗して、いいスタミナを持っていることは分かったので、前の位置で押し切る競馬をしようと思った」
 そう、あの時と同じだ。05年有馬記念。それまで後方一気のスタイルを貫いてきたハーツクライを好位3番手で折り合わせ、当時無敗の3冠馬だったディープインパクトを封じた。勝負服もハーツの時と同じ「黄、黒縦縞(たてじま)、袖青一本輪」(社台レースホース)。そのマジックが再現された。
 鋭い観察眼も光った。「いつもパドックでライバルの雰囲気をチェックするが、きょうのカワカミは2年前(1位入線→12着降着)に比べ、いいコンディションには見えなかった。4コーナーで外側にカワカミのメンコ(覆面)が目に入ったけど、大丈夫だと思ったよ」。名手恐るべしだ。
 桜花賞で2番人気、オークスでは1番人気に支持された素質馬。「春は何とかなりそうで勝てなかったので本当にうれしい。馬も夏を越えて精神的にも肉体的にも成長した」と目を細めた長浜師。「ルメールの感覚と判断に任せていた。理想通りのレースをしてくれた」と鞍上を称えた。古馬を撃破しての堂々たる戴冠。今後に注目が集まるが、師は「まだ3歳だし、これからどんどん強くなる。今の時点で無理に牡馬と対戦させても…」と語るにとどまった。名手のマジックで覚せいしたアマポーラ。ウオッカ、ダイワスカーレットとの対決が今から楽しみだ。

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2008年11月17日のニュース