「虎に翼」スピンオフ なぜ主人公はよね?「正しく怒る」に込めた思い 脚本家・吉田恵里香氏が語る裏側

[ 2026年2月23日 12:00 ]

虎に翼スピンオフ「山田轟法律事務所」脚本・吉田恵里香氏インタビュー(上)

2024年度前期のNHK連続テレビ小説「虎に翼」に続き、スピンオフドラマ「山田轟法律事務所」の脚本を担当した吉田恵里香氏
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 女優の伊藤沙莉(31)がヒロインを務めた2024年度前期のNHK連続テレビ小説「虎に翼」のスピンオフドラマ「山田轟法律事務所」が3月20日(後9・30~10・42)に放送される。女優の土居志央梨(33)が好演した人気キャラクター・山田よねを主人公に、本編には盛り込まれなかった「山田轟法律事務所」の知られざる誕生エピソードを描く。本編に続いてオリジナル脚本を手掛けた吉田恵里香氏(38)に、執筆の舞台裏や今作に込めた思いを聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 朝ドラ通算110作目。日本初の女性弁護士・判事・裁判所所長となった三淵嘉子氏をモデルに、法曹の世界に飛び込む日本初の女性・猪爪(佐田)寅子(ともこ)の人生を紡ぎ上げた。

 本編最終回(24年9月27日)オンエアの頃に吉田氏とスタッフの間で続編・スピンオフ制作への機運が高まり、25年初頭にGOサイン。具体的に動き始めた。

 スピンオフは寅子の盟友・よねを主人公に、相棒・轟太一(戸塚純貴)と東京・上野に弁護士事務所を構えるまでの前日譚。吉田氏は「スピンオフを作るなら“主人公はよね、山田轟法律事務所の話だよね”と自然発生的に決まりました。よねと轟の活躍をもっと見たかったという声を多くの方から頂いた体感がありましたし、私自身もそうだったので。72分の長い尺になりましたが、本編で取りこぼした部分を一気にご覧いただけるのがいいですし、朝ドラの1週15分×5回とはまた違って、いい経験になりました」と振り返った。

 「桂場等一郎(松山ケンイチ)のあんこ吟味なども見たかった」と伝えると「どのキャラクターでも、どの放送枠でもスピンオフが書ける状態でした。これからでも、まだまだ書けます(笑)」と一際の愛着、あふれる創作意欲を示した。

 スピンオフの注目は、カフェ燈台のマスター・増野とよねの生き別れた姉・山田夏の“再登場”。増野役は本編に続き、俳優の平山祐介。本編から成長した夏役は新たに女優の秋元才加が演じる。本編第51回(24年6月10日)で「ここのマスターは(東京大空襲で)焼け死んだがな」(よね)と語られた増野だが、今回はそこに至るまでの“紆余曲折”が明かされる。

 「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」

 日本国憲法第14条が「虎に翼」の根本的なテーマの一つ。吉田氏は「寅子が知らない、イコール視聴者が知らない物語を書いてこそのスピンオフ。本編で描き切れなかった問題、寅子の視点からは見えなかった問題にスポットライトを当てたかったので、よねの目線から憲法14条を捉えてみようと思いました。スピンオフでも憲法14条について掘り下げることができるかは、自分の課題でもあったので」とストーリーを構築していった。

 よねは本編第39回(24年5月23日)で寅子とケンカ別れし、明律大学女子部のメンバーもバラバラ。となると、戦後、よねに何かを語れるのはマスターしかいない。

 「アニメのコミカライズの連載を何年もしていたので、登場人物の裏設定や話の辻褄合わせを考えるのはとても好きなんです。マスターがいつ、どういうふうに亡くなったのか。よねはそこまで詳しく言っていませんからね」。マスターが生存している姿を描く“方法”を思いついた。「マスターにこんなに人気が出るとは予想していなかったので、スピンオフで補えることができて、本当によかったです」。果たして、どのように“蘇る”のか。

 本編にはなかった、よねが事務所の壁に憲法14条を書くシーンも登場。「よねでスピンオフを作ると決まった段階で、この場面を入れないわけにはいかないと、これも自然に浮かびました。よねにとっての憲法14条は、恵まれた家庭に生まれた寅子とはやっぱり重みが違う。地獄を味わってきたよねが憲法14条にたどり着いた、ということに意味がある。よねの人生に思いを馳せて、このシーンを書きました」と明かした。

 本編執筆時、よねは当初、冷たい印象のキャラクターを想定していた。

 「怒っていても体温は低いイメージ。それが土居さんのお芝居を拝見して、泥臭く、這いつくばって生きてきたよねの熱を実感しました。今回は“正しく怒る”“正しく不機嫌でいる”姿を描きたいという自分の一方的なラブレター(笑)。土居さんが本編で“よねのフルスロットルの怒り”を体現してくださったからこそできたスピンオフだと、心から感謝しています」

 寅子もよく“怒って”いた。例えば、本編第30回(24年5月10日)。日本初の女性弁護士の一人となり、晴れがましい席のはずの祝賀会。「生い立ちや信念や格好で切り捨てられたりしない、男か女かでふるいにかけられない社会になることを、私は心から願います」などと演説した。

 「正しく怒る」「正しく不機嫌でいる」はスピンオフの“とある台詞”にあるフレーズ。吉田氏が込めた思いとは?

 「本編にも共通しているテーマですが、“怒ること”“声を上げること”がネガティブに受け取られることが、この社会にまだあると感じています。感情的だとか、怒ったら負けだとか。でも『虎に翼』において“怒る”という行動は、誰かを傷つけるための道具ではなく、社会を良くしたり、誰かを守るためのツール。自分よがりで怒ったり、使い方を間違えると、理不尽に誰かを踏みつけてしまうこともある。そういう意味で“正しい怒り方”をしましょう、と。今回、主人公のよねに託した思いが、より深く伝わるといいなと思っています」

 =インタビュー(下)に続く=

 【虎に翼スピンオフ「山田轟法律事務所」あらすじ】

 山田よね(土居志央梨)は、東京大空襲で瀕死の重傷を負ったカフェ燈台のマスター・増野(平山祐介)をリヤカーで運んでいた。敗戦に打ちひしがれ、無秩序と差別が渦巻く上野の街。学んできた法律は無力に思え、よねの心は徐々にすさむ。

 生き別れていた姉・山田夏(秋元才加)と再会を果たすも、2人の心はすれ違ったまま。そして夏を理不尽な暴力が襲う。よねは犯人を追うが、闇市を支配する勢力のうごめきに増野も巻き込まれ、真相は闇に葬られてしまう。

 絶望の中、よねは新聞で目にした憲法十四条を、怒りに突き動かされるように壁に書き記す。やがて轟太一(戸塚純貴)との再会を機に、法律事務所を開設。追い詰められた人々の事件に立ち向かう。

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