【岸本加世子 我が道21】北野作品は私にとって宝物、ぜひまた呼んでほしい!

[ 2025年11月22日 07:00 ]

ベネチア国際映画祭で「HANA-BI」が金獅子賞を受賞。浅草での祝う会で北野武監督に花束を渡す私(97年11月28日)
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 「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」をリニューアルして1995年10月に始まった「超天才・たけしの元気が出るテレビ!!」にも呼んでいただくなど、ビートたけしさん(北野武監督)とのお仕事は本当に幸せでした。何と言っても忘れられないのは98年公開の映画「HANA―BI」です。

 作品はイタリアの水の都で97年に開催された第54回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品されて最高賞の金獅子賞を受賞し、「世界のキタノ」を決定づけました。

 たけしさんは89年公開の「その男、凶暴につき」で監督デビュー。衝撃的な作品でした。その後、「3―4X10月」(90年)、「ソナチネ」(93年)と相次いで発表。この「HANA―BI」は7作目の監督作で、自ら主演したほか、脚本、編集も担当。挿入画も自らの手によるものでした。

 孤独な刑事の生きざまを描いた作品で、私は不治の病に侵されて余命いくばくもない妻を演じました。ラストシーンは切なかった。全編を通して与えられたセリフは「ありがとう」「ごめんね」の二言だけ。でも、映画を見た多くの方に「そんなに“しゃべってない”ということに気づかなかった」と言われました。セリフをしゃべってなくても成立させてしまう、北野監督の力だと思います。

 ベネチア映画祭で日本の作品が金獅子賞に輝いたのは三船敏郎さんが主演した「無法松の一生」以来39年ぶりの栄誉でした。稲垣浩監督の名作ですね。私も現地で感動を味わいたかったんですが、連れてってくれなかったんですよ(笑い)。主人公の刑事時代の部下を演じた寺島進さんは行っていたのに…。悔しいから、後で「なんで寺島さんが行けて、主演女優が行けないんだ」ってたけしさんに食ってかかったら「いやあ、寺島は勝手に来ちゃったんだよ」と困った顔をされていました。

 監督は、成田空港に着いてすぐに電話をくださったんです。その頃はまだ、家は固定電話の時代でしたが「加世子ちゃん…」という声を聞いた瞬間、感動して、うれしくて「ウァー」と声を出して大泣きしてしまって。するとすぐに電話はガチャン!と切られてしまいました(笑い)が、その晩六本木で祝杯を挙げました。

 「HANA―BI」から北野作品には「菊次郎の夏」(99年)、「Dolls」(2002年)、「TAKESHIS’」(05年)、「監督・ばんざい!」(07年)と呼んでもらいました。私にとって宝物のような作品たちです。

 その後は「アウトレイジ」シリーズなど、いわゆる女優らしい女優さんの出番が少ない作品が多くなってしまったので…。「お百姓さんの役でもいいから」とお願いしても、監督は苦笑いされています。機会があればぜひまた呼んでほしいです!!

 ◇岸本 加世子(きしもと・かよこ)1960年(昭35)12月29日生まれ、静岡県島田市出身の64歳。77年、テレビドラマ「ムー」で女優デビュー。以降、テレビ、舞台、映画、CMなどで幅広く活躍。ドラマ「あ・うん」、舞台「雪まろげ」、北野武監督の映画「HANA―BI」「菊次郎の夏」など代表作多数。著書に小説「出てった女」、エッセー「一途」など。

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