【中村鶴松の鶴明times 5】「自分なりの精いっぱいで勤める」 血肉となった平成中村座の三役

[ 2025年10月19日 09:00 ]

食事の席での中村鶴松(本人提供)
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 【中村鶴松の鶴明times】歌舞伎の世界を描いて大ヒット中の映画「国宝」(監督李相日)の主人公の喜久雄さながらに“部屋子”からスターダムに駆け上がろうとする俳優がいる。中村鶴松(30)だ。一般家庭で生まれ、十八代目中村勘三郎さんの元で修業する部屋子となり、歌舞伎俳優の人生を歩み始めた。

 第5回では2010年10月に大阪で行われた平成中村座で演じた思い出の役を振り返る。

 10年6月におこなわれたコクーン歌舞伎の楽屋で突然、勘三郎さんから「10月にこの三役をやってもらうから。この三つとも全然ジャンルも違う、やりどころも違う。これできたら、お前最強だからな」と言い渡された。任されたのは「紅葉狩」の山神と「平家女護島」の千鳥、「弁天娘女男白浪」の伜宗之助の三役。「御曹司でもない僕にそこまで、よく任せてくれたなと思います」と当時をしみじみと語り、「勘三郎さんが何でもやってきた人なので、自分ができるものは 何でもやっていかなきゃいけない、というメッセージだったような気がします」と三役を任せた師匠の心中をおもんぱかる。

 山神は(六代目)中村勘九郎が編み出した技術を惜しげもなく授かった。舞台稽古では、勘三郎さんに褒められたり、時に欠点を指摘されたりしながら初日を迎え、また勘九郎自身も更科姫を勤めながら、毎日舞台袖で鶴松を見守った。

 初日の終演後の食事の席では「いいだろ?こいつの山神」と、勘三郎さんから褒められ、今でも心に残っている。

 千鳥もこの舞台で初めて勤めた。「千鳥は凄く難しい役。踊りの技術も必要だし、見た目のかわいさも必要。古典の大人の役でちゃんと勘三郎さんから、手取り足取り教わったのは千鳥くらいなんです」と、これも思い入れの深い役だ。

 鬼界ケ島の海女である千鳥は、純粋でけなげさが特徴。物語の舞台となった鹿児島県三島村の硫黄島でも2回演じており、計4度演じている。鶴松にとってなじみ深い役である。「愛嬌(あいきょう)の出し方、胸で歩く。瀬尾との立廻りの時に拍手をもらわないといけないとか、細かいことですけど一つ一つ覚えています」。

 勘三郎さんから授けられた教えは今でも鶴松の血となり肉となっている。残る伜宗之助も今に生きる大切な経験となっている。
 「役者だから何でもやる。どんな役でも引き受けて、自分なりの精いっぱいで勤める」。

 15年前の貴重な体験から学んだことだ。今でも鶴松は立役から女方まで幅広く演じている。

 「下手でも本当に死ぬ気でやっていたら何かは伝わると思うんです。勘三郎さんも下手でもいいから必死にやるということの重要性を教えてくれていたと思います」。芝居に死ぬ気で打ち込む。この教えを胸に、鶴松は今日も舞台に熱を込める。

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