「あんぱん」戸田恵子が涙 恩師やなせさんとの“最後の1日”語る 逝去半年前イベント共演“尽くす精神”
「あんぱん」薪鉄子役・戸田恵子インタビュー
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女優・声優の戸田恵子(67)がNHK連続テレビ小説「あんぱん」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)で6年ぶり6回目の朝ドラ出演。今作ならではの存在感を示している。国民的アニメ「それいけ!アンパンマン」を生み出した漫画家・やなせたかし氏と妻・暢さんをモデルに描く物語で、戸田は1988年のアニメ開始時から35年以上にわたって主人公・アンパンマンの声を担当している縁。主人公・若松のぶ(今田美桜)に大きな影響を与える女性代議士・薪鉄子役に挑んでいる。やなせ氏と過ごした“最後の1日”を振り返ると、恩師の教えを涙ながらに語った。
<※以下、ネタバレ有>
「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズなどのヒット作を放ち続ける中園ミホ氏がオリジナル脚本を手掛ける朝ドラ通算112作目。激動の時代を生き抜いた夫婦を描く。
2023年10月の制作発表時から、今作への参加が期待されていた戸田。今年2月に「めいけんチーズ」役などの山寺宏一(柳井嵩の恩師・座間晴斗役)の出演が発表され、第8回(4月9日)で「しょくぱんまん」役の島本須美(あんぱんを買う近所の女性・大出加子役)、第36回(5月19日)で「ばいきんまん」役の中尾隆聖(のぶが教師として赴任した母校の校長・古山時三役)がサプライズ登場。「それいけ!アンパンマン」声優の参加が相次ぐ中、ついに6月、戸田の出演が発表。“本家”“真打ち”登場と話題を集めた。
暢さんとの面識こそないものの、戸田は「どの役を頂いても、やなせ先生や『アンパンマン』とのご縁を感じたと思いますが、鉄子はのぶさんに大きな影響を与えるということで、非常にやり甲斐のある役だな、と。ただ、演じる上では『アンパンマン』に寄せるといったようなことは全く意識せず、いち役者として1シーン1シーンがひたすらうまくいくように、と臨んでいます」。フラットな状態から、のぶ以上の“ハチキン”(土佐弁で「快活な女性」)ぶりを見事に体現している。
子役、歌手を経て、1977年、劇団「薔薇座」に入団し、看板女優として活躍。89年まで在籍し、同年には舞台「渾・身・愛」で第24回紀伊國屋演劇賞個人賞に輝いた。声優としては、79年「機動戦士ガンダム」のマチルダ・アジャン役で本格的に活動をスタート。アンパンマン役はオーディションに参加していなかったものの、選考が難航。やなせ氏が戸田のデモテープを聞いて決定したという。やなせ氏は、戸田にとって“大きな傘”と例える存在だ。
楽しい思い出やエピソードも数々あるが、特に印象に残るものとして“最後の対面となった日”を挙げた。
やなせ氏は2013年(平成25年)10月に逝去。その半年前の4月、「神戸アンパンマンこどもミュージアム&モール」(神戸市中央区)のオープニングセレモニーに参加した。
「その時の先生は、目も耳も不自由になっていて、歩くにも杖が必要な満身創痍の状態。それでも、舞台袖で『杖は置いていきたい』とおっしゃいました。お子さんたちにはできる限り元気な姿を見せたい、その時にできることは精一杯やりたい、というお気持ちなのでは、と。瞬時にそう解釈して、私の腕につかまっていただいて、エスコートする形になりました。耳が聞こえないので、テープカットの合図は僕の肩を叩いて教えてください、と。質疑応答もラリーはできないからと、事前に段取りを確認して。そうまでしてイベントに臨まれた姿が…この話をすると泣けてくるんですけど…(涙声になり)そういった先生の“尽くす”という精神が本当に凄いなと、今になって実感します。できるのにやらないのが一番ダメなんですよね。50%でもできる力があるんだったら、そのMAXをやる。最後の最後に先生が身をもって教えてくださいました」
やなせ氏の他界後は「ずっと師として仰ぎ、尊敬してきましたから、親が亡くなるのとはまた違う、とてつもない喪失感が年内いっぱいは続きました。もう『アンパンマン』はできないかもしれないと、スタッフの方に相談したぐらいです」と述懐。そして、年が明けた14年の正月。東日本大震災(11年)以降続けているボランティア活動で「仙台アンパンマンこどもミュージアム&モール」(仙台市宮城野区)を訪問した。
「アンパンマンが現れると、子どもたちは私の悲しみなど関係なく、元気に突進してくるんですよね。その光景を目の当たりにした時、落ち込んでいられない、と目が覚めました。やなせ先生は“大きな傘”で、私はその中にいたんだな、と。その傘は閉じてしまいましたけど、代わりにみんなで小さな傘を開いて大きな傘にできるよう、精一杯務めてきましたし、これからも続けていきたいと思います」
やなせ氏の“尽くす精神”にも通じ、戸田が特に胸に刻む言葉は「人生は喜ばせごっこ」。第5週(4月28日~5月2日)のサブタイトルにもなった。
「迷ったり悩んだり、壁にぶつかった時は『戸田さん、人が喜ぶことをしなさい』とおっしゃってくださいました。そうすれば、諍いはなくなる。本当にそう思います。東日本大震災の時、先生は『死んでいられない』と予定していた生前葬をやめて『現地に行って瓦礫を片づける力はないけれど、絵なら』と被災者やボランティアの方々のために黙々と描いていらっしゃいました。戦争を体験されたこともあって、一大有事にも慌てず『長期で取り組まないといけないことがたくさんあります』と先を見据えて。知恵者が側にいるのは心強かったですね。これからも寸暇を惜しんで、先生に近づけるように『人生は喜ばせごっこ』を率先して実践していきたいと思います」
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