劇場へGO「七月大歌舞伎」(24日まで、大阪松竹座)

[ 2025年7月10日 11:45 ]

「髪結新三」で新三を熱演する八代目尾上菊五郎。悪党だが、なぜかその所作に引き込まれる(C)松竹
Photo By 提供写真

 八代目尾上菊五郎(47)、六代目尾上菊之助(11)の襲名披露として幕を開けた大阪の夏歌舞伎。口上で中村鴈治郎(66)が冗談めかして言っていた。「末恐ろしい歌舞伎俳優になる…」。まさにその通りかもしれない。菊之助には驚きしかなかった。

 菊之助は今回が大阪初お目見え。口上を除けば「羽根の禿(はねのかむろ)」(昼の部)、「土蜘(つちぐも)」(夜の部)と舞踊だけの出演が残念なくらい。体幹の強さ、手首の柔らかさ、そろえた指先の美しさ。「かわいらしい」「よう、やってるな」のレベルではなく、すでに舞台空間を支配する真ん中オーラまで持ち合わせ、口上で聞かせた口跡は客席がうなるほど。お芝居での姿を見てみたかったが、今後の楽しみにおいておこう。

 一方、父の八代目菊五郎が“江戸の粋”を「これでもか」というほど見せた「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)髪結新三(かみゆいしんざ)」(昼の部)。期待通りの美しさで涼しげだった。よくよく考えればこの新三(菊五郎)、めちゃくちゃヒドい男なのだが、歯切れのいいセリフ回しに浴衣の着こなし、傘をクルリとスマートに回し開く所作と、ついつい引き込まれてしまう。

 材木問屋のお嬢さんと恋に落ちた手代。新三は2人に駆け落ちをそそのかしながら、その娘を誘拐して自宅に監禁。手代はメッタ打ちにして材木問屋へは身代金をつり上げ…。それでも新三以上の上手が登場し、考え直せばどいつもこいつも「???」なのだが、なぜかクスッと笑えて、花道の新三の残像が今も脳裏にこびりつく。それもこれも菊五郎の匂い立つような品格がなせる技。あまり関西ではかかることのない名作だけに、酷暑の大阪で見るのもオツなものだ。

 さあ、この「髪結新三」に大作「熊谷陣屋」(夜の部)。いつの日か菊之助が背負うのだろうか、と思うと「長生きしなければ」と背筋が伸びる。ギリ、間に合うかなあ(笑)。【土谷美樹】 

「尾上菊之助」特集記事

「美脚」特集記事

芸能の2025年7月10日のニュース