「吉原細見」がリアルに生きた三木助の「明烏」

[ 2025年6月29日 20:13 ]

桂三木助独演会のチラシ
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】空梅雨気味の6月。「まとまった雨が欲しいなあ」と時に空を見上げてみるが、そんなもやもやも吹き飛ばしてくれる楽しい会だった。6月26日、東京・池袋のHall Mixaで開かれた桂三木助独演会「五代目の挑戦vol.14」だ。

 会場に入ると、何人かのお客さんが舞台上に展示された何かに見入っている。スマホで撮影している人もいる。「いったい何だろう?」と足を運んでみると、そこに広がっていたのは蔦屋重三郎が出版した「吉原細見」だった。吉原を訪れる人のための案内書だ。

 放送中のNHK大河ドラマ「べらぽう~蔦重栄華乃夢噺~」にはまっていると明かす三木助が決して安くはない?金を投じて入手した貴重な復刻版。この日の演し物に吉原が舞台の「明烏」を予告しており、その空気づくりの一助にと展示したものだ。開演前のおなじみの映像も「吉原細見」の表紙から入る凝った作りで、期待感をあおった。

 さて、14回目の開催となった一夜は三木助を含めて4人が出演する“異例の独演会”だった。準レギュラーと言って過言で無い金原亭杏寿(36)と金原亭駒平(35)に加えて林家咲太朗(28)がゲスト出演。ご存じ、林家たい平(60)の長男で、5月下席から二つ目に昇進したばかりの逸材だ。

 立教大学法学部在学中に「落語家になろうか、なるまいか」と悩んだ咲太朗の相談に乗り背中を押したのが三木助。そんな縁もあって三木助が“兄心”で二つ目昇進披露の口上を用意した。

 三木助冒頭のあいさつに続いて駒平の「一目上がり」で会はスタート。杏寿が「お菊の皿」で続き、三木助が「人面瘡(じんめんそう)」を披露して中入り。後半は幕開けに4人が勢ぞろいし、杏寿が進行役を務めて口上が行われた。

 駒平が血筋の話をしていじる。祖父が三代目で、おじが四代目の三木助。一方、「笑点」でもおなじみのたい平を父に持つ咲太朗。ヒット中の映画「国宝」(監督李相日)を引き合いに出し、親の七光り、十四光りもなく、小劇場の俳優を経て落語家になった自身をたとえて「僕はさしずめ吉沢亮」と話して笑わせた。「国宝」は任侠の家に生まれながら、歌舞伎役者として生きる喜久雄(吉沢)の生きざまを描いた一編。対して歌舞伎の名門に生まれたのが横浜流星演じる俊介だ。2人の切さ琢磨も大きな見どころだ。

 続いた三木助は「たい平師匠に声がそっくり」と咲太朗の特徴を口にしつつ「父がたい平師匠であろうとも真打になるまでは精進して欲しい」と戒めを口にし、「お客様にもかわいがってもらって認めてもらえる噺家に」とエールを送った。

 通常、口上では当人はしゃべらないが、そこは特例。咲太朗も「国宝」の話を出して、「新宿末広亭の高座で一席を終えて連獅子を披露しました。母親から赤いドレスを借りて頭につけて…」と笑わせた。駒平だけでなく咲太朗も取り上げた「国宝」の話題。3時間近い大作だが、改めてその人気を実感した次第だ。興行収入はゆうに20億円を超えている。

 ちなみに前座名「さく平」から改名した「咲太朗」は本名。そのまま芸名にしているのは関東では1人で、ちなみに上方にも一人。山崎邦正の「月亭方正」だが、こちらは漢字表記が違う。本名を芸名に据えた咲太朗は親譲りの酒豪で、大学時代、酔い潰れて道路で寝ていて警察に保護された過去があったそうだ。「その時に迎えに来てくれたのが父でした」と打ち明けて大物ぶりをうかがわせた。

 三本締めの景気づけで口上を終えた直後に高座に登場したのが咲太朗。口上でさりげなく振っていた酒の話は伏線で、「親子酒」をダイナミックに演じた。確かにたい平に声が似ている。日々勉強に励み、大きな花を咲かせて欲しい。

 トリに上がった三木助の「明烏」は、「黒門町」の愛称で親しまれた八代目桂文楽が得意とした郭(くるわ)話。布石として打っていた「吉原細見」がここで生き、ウブで堅物な若旦那が“男”になっていく過程をおもしろおかしく聞かせた。「これから頻繁に大門をくぐるんだろうな」と思わずニヤリとさせられた見事な一席だった。

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