三田村邦彦“大森組”出演陣とシバイヌの撮影&キャスティング秘話に膨らむ期待 1日初日「晴れの国」
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三田村邦彦(71)の主演映画「晴れの国」がきょう1日、東京・新宿のK,sシネマで初日を迎える。本紙の取材に三田村は「見終わった後に心があったかくなる映画です」とアピールした。
岡山県高梁市を舞台に、東京のIT企業を退職して1人で地元・岡山の人里離れた家に移り住んだ青年と、山中で自給自足の生活を送り「仙人」と呼ばれる謎めいた初老の男(三田村)の出会いから始まる物語。三田村は「前野朋哉くん演じる青年が、苦しみながらも仙人が家族の元に帰っていく姿を見て自分の生き方を変えていく。2つの家族の再生が描かれます」と見どころを明かした。
大河ドラマ「武田信玄」や朝の連続テレビ小説「京、ふたり」「ぴあの」などで知られるNHKの元チーフディレクター、大森青児監督(76)が「家族の日」以来8年ぶりに手掛けた劇場版第2弾。倉敷出身の前野の参加も得て、前作に続いて故郷の“岡山愛”にあふれた人間ドラマに仕上げた。
新選組の若き隊士たちの青春を描いた時代劇「壬生の恋歌」(1983年放送)から40年来の親交がある三田村を主演に据えて撮影がスタート。三田村は「大森さんと石井ふく子さん、このおふたりから“出てよ”と言われれば、内容を聞かずとも“はい”と答えます。間違いないというか、変なモノは撮らないので」と絶大な信頼感を寄せている。「飾り職人の秀」役でおなじみの「必殺シリーズ」の印象が鮮烈で、いつまでも若々しい三田村だが、大森監督は「若くは見えますが、いい年齢の重ね方をしてますよ」と笑顔で称えた。
志を一つにした人たちが集結する大森組。「ディスカッションはたくさんやりますよ。中身についてどのスタッフが提案してもOKです。自分が思っているより良かったら採用しますから。NHK時代からずっとそうしてきました」と大森監督は話す。
今作でも仙人の人物像や行く末について、三田村と忌たんのない意見を交わしたという。どれだけ怪しさを出すか、サスペンスの度合いなどについて考えをぶつけ合った。
大森監督が「あざとい芝居が嫌い」と言えば、三田村も「クサいという言い方は変ですけど、いかにも訳ありな芝居はせず、本当に普通の淡々とした感じが面白いと思います。役者ってどうしてもやりたがるものですけどね」と同調。そんな大森演出によって、登場人物が岡山の山間の景色に溶け込んで見える。日常をただ切り取った感じの自然さ。これが真骨頂だ。
大森組に欠かせない川上麻衣子(59)をはじめ歌手の丘みどり(40)や元NHKアナウンサーの石澤典夫(72)ら共演陣も豪華。テレビ大阪で2009年1月に始まった三田村出演の紀行旅番組「おとな旅あるき旅」(土曜後6・30)でエンディング曲「あなたと、君と」をデュエットしているのが丘。今年1月の東京・三越劇場公演「おちか奮闘記」でも夫婦役で共演している。
丘の出演はてっきり三田村の推薦かと思ったら「私のキャスティング」と大森監督が間髪置かずに答えた。「姫路出身の彼女をテレビで見てファンになり、5年ほど前に会いに行きました。“役者やる気ないですか?”と聞くと、彼女は“東京に出る時に2つの望みがありました。1つは紅白に出場すること、そしてもう一つは“女優になること”と言ったんですよ」
三田村に「丘みどりさんって知ってる?」と尋ねると、「このあいだ旅番組のエンディング曲をデュエットで出しまして…と言う。びっくりしましたが、三田村さんは“あれだけの感性ですから問題ないと思います”と太鼓判を押してくれました」と振り返った。
丘に会う段取りをつけてくれたのはスポニチOBの音楽プロデューサーで、俳優としても活躍した小西良太郎さんだったと監督は明かす。小西さんも出演した川中美幸の主演舞台「天空の夢」(11年)を大森監督が演出して出来た縁。「小西さんに相談するとキングレコードのプロデューサーを紹介くれました」と振り返るが、当の小西さんは23年5月13日に86年の生涯を閉じてしまった。
実はお城の案内人の役で出演も予定し、打ち合わせも進めていたそうだ。ところが22年5月にクランクインした作品はコロナ禍によって1年の延期を余儀なくされる。三田村も「延期がなかったら出演なさっていたんです」と悔しそうな表情を見せた。プロデューサーの森平人氏もコロナに命を奪われた。撮影は弔い合戦の意味合いもあった。
延期前の22年に撮影を終えていたのは石澤だ。その堂々たる演技ぶりには恐れ入ったほど。17年にNHKを退職してフリーに転じた石澤が司会を務めていたTBSラジオに大森監督が出演。その際、「わたし、映画に出られませんか?」といきなり売り込んできたという。若村麻由美や木の実ナナら名だたる女優と吹き込んだ2人芝居のラジオドラマがあり、そのテープを送ってもらった。聞いてみてびっくり。「いける!と思った」と監督は話した。
三田村は「文学座の養成所を僕は2度落ちましたが、同世代の石澤さんは受かってるんです。5000人くらいが受けて最終的に合格者は20数名ですから、そりゃ芝居はできますよ」と、納得顔で笑った。
NHKの先輩にあたる監督によれば、もともと石澤はディレクター志望だったと明かす。「志願者は例外なく原稿を読まされるんですが、“君、いい声しているね。アナウンサーなら採るよ”と言われたんだそうです。断れば、そこで終わってしまう可能性が大。“ドラマ作りは入ってからでもいいか”と思い、それで入局を決意したとか」
初めての芝居。初めての岡山弁。「本人は心臓バクバクですと言ってましたが、見事なものでした」と先輩も脱帽した。
青年と仙人の橋渡し役になるシバイヌ「三四郎」の名演ぶりにも触れておきたい。最初に予定した犬は狩猟犬で、山中に放すと、イノシシのにおいなどを追ってなかなか戻って来ない。撮影はコロナ禍で1年延期。この期間に三四郎に出合うことができた。「岡山県の災害救助犬です。タレント犬は撮影がNGにならないように吠(ほ)えないように訓練されますが、救助犬は別。がれきの下に人がいた場合に“ワン”と吠えて知らせるように訓練される。今回の“伝書犬”にうってつけで、全部一回でOKですよ」と監督も舌を巻いた。
タイトルの「晴れの国」は晴れの日が多く、温暖な気候の岡山県が1989年からトータルイメージとして広報している言葉でもある。エンディングに流れるのは22年6月に73歳で亡くなった葛城ユキさんの「今、HEART BREAK」。彼女も岡山県川上町の出身。映画の舞台となった現在の高梁市である。
昨年6月に岡山で公開され、大阪、神戸と上映が続き、そして東京上陸。殺伐とした作品が多い中で、今時珍しい心温まる良心的な作品。応援したい。
(佐藤 雅昭)
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