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アリ戦“仕掛け人”新間寿氏明かす舞台裏 90億円訴訟は交渉で「チャラ」に

[ 2022年10月2日 04:15 ]

アントニオ猪木さん死去

新間寿氏
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 猪木VSアリなど異種格闘技戦の“仕掛け人”である新間寿氏(87)は「アントニオ猪木ほど素晴らしい人間はいない。これまでもいなかったし、これからも出ないだろう。たくさんの人に夢と希望を与えた。一緒にやれたことは感謝しかない。本当に寂しいね」と胸中を語った。「ここ3年は没交渉だった」そうで、訃報は自身の娘さんからの電話で知ったという。

 76年6月に開催されたボクシング世界ヘビー級王者との異種格闘技戦。新間氏は新日本プロレスの営業本部長として「世紀の一戦」の実現に奔走した。1ドル308円の時代にアリのファイトマネーが300万ドル。金銭交渉にルール問題と難題をクリアしたが、試合は15回判定引き分け。すっきりしない結末に場内は騒然とし、翌日の新聞各紙にも酷評が並んだ。

 さらにアリ側からは、未払いのファイトマネー120万ドルにペナルティーを加えた3000万ドル(約92億円)を請求される裁判を起こされた。新間氏はロサンゼルスのホテルでアリのプロモーター、ハーバード・ムハマド氏と交渉。訴訟を取り下げてもらった。「最初は猪木も同席するはずだったんです。でも、当日になって“一人で行ってくれ”って。ハーバードは心の度量の広い人でしたね。90億円をチャラにしてくれて猪木夫妻と私をアリの防衛戦に招待してくれたんですから」と当時を懐かしんだ。

 新間氏は猪木さんが89年に立ち上げたスポーツ平和党の幹事長を務めるなど、希代のスーパースターを陰で支え、共に戦ってきた。プロレスを離れた「猪木寛至」さんとは疎遠になってしまったが、今もプロレスラー「アントニオ猪木」への思いは変わらない。「プロレスは愛、格闘技は恋。愛は与えるものだけど恋は奪うものだから。両方できたのはアントニオ猪木しかいない」と称え、故人をしのんだ。

 ◇新間 寿(しんま・ひさし)1935年(昭10)3月22日生まれ、東京都出身の87歳。中大卒業後、サラリーマンを経て66年東京プロレス旗揚げに携わる。72年新日本プロレス入社。猪木VSアリ戦の実現、IWGP構想の提唱など団体の隆盛に尽力。WWF会長を務め、2019年にWWE殿堂入りした。

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