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最後に古傷を痛めることなく「自らの脚」で無事にリング降りてほしい

[ 2022年6月13日 05:30 ]

武藤敬司 来春までの引退発表

リング上で引退表明する武藤
Photo By 提供写真

 病院へ同行したことがある。相模原市の東芝林間病院。駅前の桜並木に花舞う季節だった。「もう俺、膝がボロボロだからさあ」。常々ぼやいていた武藤は入院の3日後、左膝の手術を受けた。

 必殺技の代償だった。ムーンサルトプレスの美しい円弧に会場は沸き上がる一方、マットに叩きつけられる両膝は悲鳴を上げていた。衝撃の蓄積で関節は変形。耐性は限界に達していた。痛々しいその姿に“現役生活はそう長くないのでは”と内心想像していた。

 ――24年も前の話だ。あの時、歩くこともままならなかった男は、長期欠場して半月板を除去した男は、その後も何度となく膝にメスを入れた男は、四半世紀近くたった今もなおリングに立ち続けている。並々ならぬ執念に、感服せずにはいられない。

 レスラー人生の最終章。最後に見たいカードもある。最後に見たい技もある。だがそんなことより、最後に古傷を痛めることなく、自らの脚で無事にリングを降りてほしい。終止符は遅くとも来春、桜並木に花舞う季節。ケガなく引退できることを切に願う。(97~99年プロレス担当、総合コンテンツ部部長・野口 雄)

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2022年6月13日のニュース