ブルージェイズ・シャーザー単独インタビュー 厳しい球数制限の米球界に警鐘 “日本流”に強く引かれる
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サイ・ヤング賞3度、通算222勝を誇るブルージェイズのマックス・シャーザー投手(41)がスポニチ本紙の単独インタビューに応じ、厳しい球数制限が敷かれる米球界の現状に警鐘を鳴らした。近年、複数投手による継投が主流だが、それが故障増加の一因になってはいないか。先発投手が100球以上投げる“日本流”のマネジメントに、レジェンド右腕は未来を見いだしている。(聞き手・奥田秀樹通信員)
――昨秋ワールドシリーズの会見で、ドジャース・山本の完投能力を称え、完投が減っている現状を嘆いた。
「一番言いたかったのは完投が減っていることじゃない。先発に110球前後投げさせる機会が減っていることが問題なんだ。今の野球は、先発に球数を投げさせることに過剰なほど慎重になり過ぎている。ただその理由は理解している」
――その理由とは?
「現代の救援投手はかつてないほどレベルが高い。だから、試合に勝つために、早めに先発を交代させる。それが今の合理的な戦略だ。だがこれは自分にとって好ましいゲームの変化ではない」
――自身が考える理想の野球とは?
「先発投手が100球から110球程度をしっかり投げる試合。それが一番面白いと思っている。試合の勝敗が全て先発で決まるとは言わないが、多くの部分がスター選手によって左右される方が野球として魅力的だ」
――かつて野球におけるスターとは本塁打打者であり、完投できる先発投手だった。
「しかし現在は先発が85~90球前後で降板するのが当たり前になりつつある。マッチアップ重視で細かい継投や対戦相性に依存して。先発としてはもっと長いイニングを任される方がやりがいがあり、楽しいものだ」
――30球団のフロントは勝利最優先にこの戦略にかじを切った。
「正直に言えば、現状を変えるにはルール変更が必要だろう。先発投手に長く投げさせることにメリットを感じるようなインセンティブを制度として用意しなければならない。これまでのルール変更の多くは、結果的に投手にとって不利に働いてきた。それが負の連鎖を生んでいる」
――負の連鎖とは?
「限られた球数やイニングで結果を出さなければならない。そのため、投手はストライクゾーンにより強い球を投げることを求められる。より鋭く、より打者を圧倒する球質が必要になる。その結果、体への負担が増し、故障の増加につながっている。もし先発が100~110球を投げるスタイルに戻れば、野球全体は良い方向に向かうはずだ」
――球数が少なくても全球とも全力投球を求められれば、故障のリスクが高まる、と。以前から日本野球の投手育成の環境を高く評価していた。
「メッツ時代に同僚だった千賀とはこの点についてよく話した。日本では120~130球を投げることが許されている。その経験を積むことで、投手は自分自身をより深く理解できるし、成長できる。球数が増え、限界に近い中でどう試合を組み立てるか。その経験を実戦で積めるのは大きい。そこに日本の投手に強く引かれる理由がある。日本には成長を促す“余白”や“時間的なゆとり”がある。これからも日本の投手はメジャーで成功していくと思う」
――米球界の育成についてはどうか。
「球数を制限し、70球前後で全力投球を求める方向にシフトしている。それは投手にとって、特に健康面でいいとは思わない。投球は単なるパワー勝負ではなく、アート(芸術)なんだ。これは正しいか間違いかという話ではなく、どんなスタイルの野球を目指すのかという哲学の問題だと思っている」
◇マックス・シャーザー 1984年7月27日生まれ、米ミズーリ州出身の41歳。ミズーリ大から06年ドラフト1巡目(全体11位)でダイヤモンドバックスに入団。09年オフにタイガースにトレード移籍し、13年に自己最多21勝で初のサイ・ヤング賞を獲得。ナショナルズ移籍後を含め同賞は3度。球宴選出8度、無安打無得点試合2度。1メートル90、94キロ。右投げ右打ち。右目が青色、左目が褐色のオッドアイで、愛称は「マッド・マックス」。
≪IL入りも通算3500Kあと1≫シャーザーは19年目の今季も開幕ローテーション入りし、ここまで5試合で1勝3敗、防御率9.64。4月24日のガーディアンズ戦で2回1/3を6安打7失点でKOされた。「明らかに状態が良くなかった。まだシーズン序盤。一度しっかり立て直すべきタイミング」と話し、翌25日には右前腕の腱炎と左足首の炎症のため負傷者リストに入った。史上11人目の通算3500奪三振にあと「1」に迫っている。
【取材後記】シャーザーは常に新しい知識や方法論に目を向ける。一方、大リーグが導入する新ルールや技術革新を、無条件に受け入れるタイプではない。野球の本質、投手の体への影響、あるいは審判という存在の尊厳に関わると感じれば、意見を口にし、時に物議を醸した。
今回のインタビューでも、その鋭さを肌で感じた。「山本の完投を称賛していましたが…」と切り出すと、少し表情を変えて「覚えてないな」と答えた。意外な返事に、一瞬会話が止まりかけた。
ただ、完投が減少していることなどを補足すると、シャーザーの中で何かがつながった。「それは球数のことを言いたかったんだ」。そこから一気にエンジンがかかった。早口だが、論理は明快。投手という仕事への深い理解と誇りを感じた。(MLB担当・奥田秀樹通信員)
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