「投げろ」じゃない「曲げろ」だった…国学院大・鳥山泰孝監督がエースを変身させた「タイム」

[ 2025年9月25日 23:17 ]

東都大学野球 秋季リーグ戦第2週第2日   国学院大5―2東洋大 ( 2025年9月25日    神宮 )

<東洋大・国学院大>9回、ピンチで登板した当山(右)と一緒に屈伸をして声をかける国学院大・鳥山監督(中央)=撮影・松永 柊斗
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 東都大学野球の第2週第2日が行われ、国学院大は2戦連続で延長タイブレーク戦を制し、今季初の勝ち点を獲得した。前日に先発で8回1/3を2失点だった左腕・当山が9回途中から救援する執念の継投策で競り勝った。勝負どころでエースの連投を決断した鳥山泰孝監督は「春に悔しい思いをした当山がこの秋に懸けていることは伝わっていた。(連投は)大正解だった」と話した。

 鳥山監督が「東都のセオリー」を破った。1戦目に先発したエースは3戦目にもつれた場合の先発に回ることが定石。前日の初戦は左腕・当山を先発させ、延長タイブレークの末に競り勝った。指揮官はこの日も当山をベンチ入りで救援待機させた。

 時は来た――。走者が生還すればサヨナラ負けを喫する1―1の9回2死一、二塁で鳥山監督が「ジョーカー」を切り、当山がマウンドに駆けた。

 ただ、筋書き通りに進まないのが野球の悲哀。エンジンのかからない当山は四球で満塁にピンチ拡大。ここで鳥山監督が「タイム」をとり、マウンドに歩み寄った。「一体、どんな声かけをするのか…」。球場が固唾(かたず)を飲んで見守る中、指揮官は言葉ではなく、屈伸するように指示した。マウンド上で屈伸する鳥山監督と当山。シュールな光景にネット裏で観戦していた記者も思わず「く、屈伸ですか…」と独り言を言った。

 ただ、ピッチャーは分からない生き物だ。屈伸した当山は不思議と己を取り戻した。タイム空けには別人のような投球を披露。あっという間に1ボール、2ストライクに追い込むと、最後はスライダーで空振り三振を奪った。タイブレークに突入した10回は味方打線が4点を奪い、裏の守備を1失点にしのいだ当山が勝利投手になった。結果的に当山は3戦目で先発するよりもはるかに少ない球数でチームに勝利をもたらした。

 なぜ、屈伸させたのか、気になった。試合後の取材では記者が質問するより早く、輝かしい経歴を持つベテラン記者が「屈伸の件」を聞いた。鳥山監督は表情を崩さずに振り返った。

 「まあ、1回気持ちを落ち着かせなさいと。“お前のボールを投げれば大丈夫だから”と。本当の当山を取り戻させるための動作、言葉がけ、あとは時間を取ってあげようと。それが僕に出来る作業。後押しになったか、分からないですが、精一杯できることをやりました」

 ハッとした。記者も紙面企画などを考える際、いくらデスクの前で鉛筆をかじっても「ナイスアイディア」は生まれない。ランニングや帰宅の際のサイクリングなど運動系の刺激を入れることで妙案は降ってくる。鳥山監督は本来の当山を取り戻させるために言葉で、そして体で刺激を与えていた。2戦続いた東洋大と国学院大の激戦。指揮官の「タイム」がゲームチェンジャーとなった。(アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)

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