【甲子園】73歳の開星・野々村直通監督、14年ぶり聖地は「今までで最高」 選手称え「あっぱれ」連発
第107回全国高校野球選手権第8日 2回戦 開星2―6仙台育英 ( 2025年8月14日 甲子園 )
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開星(島根)は仙台育英(宮城)に敗れ、春夏通じて初めての甲子園一大会2勝目を記録することはできなかった。「本当によくやったと思いますね。コールドゲームみたいな試合にならずに。本当に相手にされないのかなっていう危惧はあったんですけど、初回に1点取れましたしね。本当にもう感謝しますよ」。11年夏の甲子園を最後に退任し、20年3月に20年に復帰。今大会最年長の73歳として14年ぶりに聖地に戻ってきた野々村直通監督は、笑顔を交え、すがすがしい表情で試合を振り返った。
優勝候補を相手に、見事な先制攻撃を見せた。初回1死、2番・下宮涼平(3年)が四球で出塁すると、続く3番・持田聖純(3番)が右前打で一、三塁と好機を拡大。4番・松崎琉惺(2年)が中犠飛を放ち、先制した。しかし直後に逆転を許すと、得点を積み重ねられ、徐々に点差は広がった。それでも1―5の8回に松崎が適時三塁打を放つなど、最後まで逆転を諦めなかった。「みんなの力で、差別なく、区別なく、補欠の子も協力して、今までで最高ですよ。補欠もベンチ入りもベンチ外のつながりも、それで満足です」と指揮官にも選手たちの気持ちが伝わってきた。
久々に踏みしめる聖地の土。感慨深いものはあった。「嬉しかったのと、ある意味本当に感謝して野球ができた。2時間10分ぐらいかな?だけど、すごく長く感じました。前は、あっという間に終わっちゃった。時間的な短さを感じたけど、今日はほんとに長くね、甲子園のベンチで生徒と一緒に野球する楽しい時間が倍ぐらいのイメージがあります。過去の監督時代とは違う時間の長さを感じました。嬉しかったですね」と言葉をかみしめる。前回監督時とは異なり、現在ではある程度の部分を選手に任せ、見守る形をとっている。「戦術が先行するんじゃなくて、試合が始まった流れを見て、子供たちをこう使ってあげようとか、元気にやってるのかなっていうのを見ながらやってますんで、今はね。無責任と言えば無責任かもしれんけど。やっぱ子供たちがね、やってると満足ですね」と甲子園での2試合は成長を感じる時間でもあった。
野球を通じての人間形成に力を入れる野々村監督。「まずいい学生を作ろう、野球を通じてってやってきて。必ず親は“3年間見てくれますか”っていうのがね、契約なんですよ。倒れたとか脳梗塞で入院したら親も諦めますけど、今の形でいいからやってくださいと。今はそういう状況を見ながら、僕でよければっていう気持ちはあります」。監督への執着はないが、人間形成にはこだわる。今後も信念を変えることなく指揮を執る。
今大会、広陵(広島)を巡って、今年1月の部内暴力が大会前にSNSなどで拡散。7日の旭川志峯(北北海道)との初戦では3―1で勝利し、2回戦進出を決めていたが、10日に同校の堀正和校長が出場を辞退することを明らかにした。大会開幕前にSNS上で誹謗(ひぼう)中傷の投稿が一気に拡散。同校長は「臆測に基づく内容、生徒の顔写真」や、野球部寮への「爆破予告もあった」と明かした。
73歳の野々村監督はSNSについて「僕は見ないんだけど、結局陰から物を言うっていうのは卑怯でね、俺はいつも思うけど」と言う。「うちらでも匿名で手紙が来たりするんだけど、名を名乗れって。我こそは出雲の国の野々村であるぞと。いざ尋常にっていうね。批判するなら出てこいと、お互いに。それが武士道でしょう」と語気を強める。自チームに関しては「弱いものをいじめないとか。お年寄りを大事にするとか。そこの人間性が出てくるでしょう。だから寮生活とかそういうこともね、すごく風通しがよくなって、ほんと助け合ってね。うちのチーム自慢じゃないけど野球は弱いけど、弱い子を助ける人間だな。これが最高に感謝です」と断言した。
監督自身、過去には10年選抜大会で21世紀枠の向陽(和歌山)に敗れた際に「末代までの恥。切腹して死にたい」と話し、物議を醸したこともある。ただ今は、野球を通じての人間形成にのみ重きを置き、他者について言及することはない。「60(歳)で高野連を抜けたから関係ねえやって思ったから(著書に)『ヤクザ監督』って名前つけたんだけど、まさか戻るとは。いい話題で“ああ、あいつまた帰ってきたぞ”って、僕の考え方で一つでもいいものがあれば戦後の教育で、取り上げていただけるんなら、甲子園に来れたことが嬉しいですね」と笑った。
「あっぱれですね。ここまで出たことすごい、あっぱれ。また一つね、あんな試合して勝ち上がった、あっぱれ。でも強豪校に対して負けたとはいえ、完全試合、ノーヒットノーランじゃなくて、初回に初ヒットが出て1点取ったなんて。ほんとに、もうあっぱれですよ」。最後まで、野々村節満載で選手を称え続けた名物監督。土産をたくさん抱え、さわやかに聖地を去った。
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