名将が語る高校野球DH制 仙台育英・須江監督「より面白くなる」健大高崎・青柳監督「投手の負担減る」

[ 2025年8月2日 05:00 ]

仙台育英・須江監督
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 来春の選抜大会から高校野球でも指名打者(DH)制の導入が決まった。DH制が与える影響を「令和の名将」に聞いた。22年夏の甲子園で東北勢初の優勝を果たした仙台育英(宮城)の須江航監督(42)、24年選抜で同校初の甲子園優勝に導いた健大高崎(群馬)の青柳博文監督(53)が未来を語った。(聞き手・柳内 遼平)

 【仙台育英・須江航監督】間違いなく高校野球は今より面白くなりますね。選手育成の観点でもプラスしかない。いろいろな改革を進めていることは素晴らしいことだと思います。

 野球を「見る」面白さにおいて打撃は欠かせません。土壇場での逆転など試合が動くエキサイティングさが人々の「次も見よう」のきっかけになる。投手戦を見て面白いと思うのは経験者たちです。

 DHをどう捉えるかにチームの色が出そうですね。足が抜群な選手や小技が得意な選手を使うこともあるでしょう。DH=強打者である必要はない。もし、宮城大会決勝で使用できたら(控えの)山中(琉空=3年)という最も脚力がある子を9番か、2番に使った可能性もありますね。

 逆に失うものは何か。それは投手が打者を経験して得る「自分が打者だったらどう思うか」というようなマウンド上での駆け引きや、走ることで磨かれる「走塁勘」。野球=走塁だと思っているので、投手の「嗅覚」みたいなものは失われるのかもしれません。

 中学や少年野球でも導入してほしいです。僕は中学野球の指導経験があり、少年野球も見ていた。野球って守備が難しい競技で、守れないと試合に出られない。捕る、投げる、打つ、走るがそろうのは運動神経が整っている子。スーパーマンしかできないんです。

 運動も勉強も共通していて、できるから好きになれる。得意なことが自信に変わり、未来が開けていく。少年野球は身のこなしが良く、ショートをうまく守れるような子が目立ち、レフトやファーストをやっている子が目立つことは少ない。でもDH制があれば、打てれば試合に出られる。活躍の場が生まれ、もっと野球を好きになる子が増えることを願っています。

  【健大高崎・青柳博文監督】DH制導入はありがたいことです。今まで使われなかった選手にチャンスが生まれ、従来の野球とは違った良さが出てくる。投手の継投策も打順の巡りに関係なく、投球だけを見極めて代え時を探ることになりますね。

 野球のパワーバランスが大きく変わることはないでしょう。練習試合はDH制を採用しますが、スコアに大きな変化はありません。ただ、起用法が変わります。うちでは延長タイブレークの守備も見据えてレフトの佐伯(幸大=3年)は終盤で退くケースが多いですが、守備を考えずに打撃特化の選手がフル出場できる。肩や肘を痛めて従来ならベンチを外れていた選手にも希望を与えるでしょう。

 一番は投手の故障予防。前橋育英との群馬大会決勝でヒヤッとする場面がありました。延長タイブレークで併殺を免れようと打者走者の石垣元気(3年)が一塁にヘッドスライディングしたんです。

 普段から野手を含めて「肩や手首を痛めるからヘッドスライディングはするな」と教えているんですが、気持ちが入りすぎてしまった。自分には高校の選手時代に苦い思い出があります。外野守備で飛び込んだ際に左肩を痛めて「脱臼癖」がつきました。脱臼って怖いんですよ。東北福祉大でも“ベンチに入れるかな”というタイミングで再発したり、くしゃみをしただけで脱臼したり…。プロ野球でも活躍を期待される石垣が“自分のようなケガをしたら…”と思うとゾッとしますね。

 もし、この夏の群馬大会でDHがあれば、ベンチ外の選手をDHでスタメンに使っていたかもしれませんね。それくらい野球の考え方が変わる改革なんです。今は高校野球の変革期。柔軟な考え方で適応していくことが大切になりますね。

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