【イチロー氏インタビュー(下)】「選手の本音が見えない」 現代野球への疑問

[ 2025年7月26日 05:00 ]

米野球殿堂博物館の「日米野球展」の開幕式に出席したイチローさん(中央)。右端は野茂英雄さん(共同)
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 身体への探究心、野球への深い思い入れ。イチローさんは今もいろんなことを考える。

 ―以前から現代野球への疑問を投げかけてきた。データ偏重が行き過ぎるあまり、戦術や選手の没個性化が気になる。
 「選手の本音が見えない、という退屈さもある。(優等生発言で)面倒くさいことに巻き込まれないことにプライオリティーを置いているように見える。称賛も批判もない感じ。プロとして疑問に思うことは多い」

 ―現役時代は結果で批判を退けた。現在それに代わるものは。
 「高校生指導では技術的にも精神的にもできるだけ厳しくしていますが、そもそも僕自身ができているのかどうか。彼らから『おまえは口だけか』となれば、(現在の活動を)続ける資格はない」

 ―長嶋茂雄さんが亡くなられた時、王貞治さんが長嶋さんの人生を「退くことのない人生」と表現された。イチローさんは自身の人生をどう表現するか。
 「自分の意思に従い、意のままに進む、でしょうか。登っているのではなくて水平線を前に進んでいるイメージ。『高みに登る』と表現する人がいますが、現役時代からその感覚はない。理想を言えば人のちょっとだけ先を走りたい。先を走りすぎると変人色が強くなりすぎるから」

 ―高みではないとは。
 「高みを目指すと頂上も下も見えなくなってしまう。でもフラットなところを走っていると前が見えるし、振り返れば後ろも見える。それが好き。『高みに登った』と人が表現するのはありがちですが、自身がそう思ってしまうのはどうかと思いますね」

 ―今、足りないものがあるとしたら。
 「徳ですね。曖昧さを受け入れる器がないんです。人間は曖昧な生き物だと思うし、徳のある人というのはそれを受け入れる寛容さがある。僕は曖昧さを『ハッキリしろ』と思ってしまう性格で、穏やかじゃないんですよね」=終わり=

 ≪日米野球展開幕式に出席≫イチロー氏が米野球殿堂のあるニューヨーク州クーパーズタウンに入り、同博物館で開催される「日米野球展」の開幕式に出席。ドジャースなどで活躍した野茂英雄氏、通算連続試合出場記録保持者のカル・リプケン氏らも参加した。今後は殿堂入りメンバーの偉業を祝うイベントが開催され、26日(同27日)はイチロー氏ら3人の殿堂入りメンバーが参加するパレード、27日(同28日)はスピーチが行われる。

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