日本ハムCBO・栗山氏 草を食べる愛犬に学ぶ 人が持つ能力も使わなければ失われていく

[ 2025年6月10日 06:00 ]

栗の樹ファームでグラウンドを見つめる愛犬ジョージュニア
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 侍ジャパン前監督で日本ハム栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO=64)による連載「自然からのたより」は、犬が草を食べる姿からの学びについて。サクラの花が散った北海道では、散歩コースにもさまざまな草が顔を出す。この時季、愛犬ジョージュニアが草をよく食べる。その理由はさまざまだが、危ない草は避けて必要な草だけを食べている。そんな犬たちの姿は、便利になることで、思考や工夫といった人間の持つ能力が少しずつ衰えていくことを教えてくれる。

 北海道も桜の花も散って、新緑の季節を迎えている。毎朝の日課となっているジョージュニアとの散歩も気持ちいい。散歩コースには草が茂り、木々の若葉とともに緑色に染まるこの時季、犬たちはよく草を食べる。

 柴犬のジョージュニアは、子犬のときに栗の樹ファームにやって来てもう3歳。名前は大リーグの往年の名選手、ジョー・ディマジオが由来。そして、ジュニアは以前飼っていたジョーの2代目だから。よく見ると、そのジョージュニアが、ボールを選んで好球を打つように食べられる草だけを食べている。

 栗山町に住む知人の和食の哲人が、こんな話をしていた。「この辺りでも、誰も気付かなくなったけど、食用になる草はいっぱいあるんです」と。足元にはいろいろな草が生えていた。私には普通の雑草にしか見えないけど、そこには食用になる草もあった。

 玉琢(みが)かざれば
  器を成さず
 人学ばざれば
  道を知らず

 これは儒教の最も基本的な経典「経書」の一つ「礼記」に出てくる言葉だ。どんな宝石も磨かなければ器にはならないし、いかに優れた能力を持った人でも学びがなければ正しい道を知ることはできない、という教え。人が本来持つ能力も使わなければ、いずれ失われてしまう。どんな草が食用で、薬にもなるのか。この時季ならつくしやヨモギ…。ドクダミは薬にもなる。そんな先人たちの知恵はずっと受け継がれてきたはずなのだが、今の時代、どの草が食べられるのか見分けられる人はそう多くないのではないだろうか。

 野菜はスーパーに売っている。通販でも手に入る。食べられる野草もそうだ。春の七草も秋の七草も、わざわざ採りに行かなくていい。便利な時代だ。でも、便利な故に持てる能力を捨ててしまうと違う方向へ行ってしまう。野球でもさまざまなデータが手に入る時代だが、そこに頼りすぎてはいけない。重要なのは感性。その感性を生かすためのデータにしないといけない。

 草を食べるジョージュニアが、そんなことを教えてくれた。

 ▽犬が草を食べる行為 さまざまな理由が挙げられるが、主には胃腸の不調の改善や栄養補給、ストレス解消などがある。消化不良を起こしているときには草を食べることで胃を刺激し、食べたものを吐き出して症状を改善したりする。また、ビタミンやミネラルの補給目的も。食べるのは主にイネ科で、食べると中毒を起こすのはツツジ科やユリ科など。道ばたの草は除草剤や農薬が散布されていたり、寄生虫が付着している場合もあるため注意しないといけない。

 ▽礼記 儒教の最も基本的な経典「経書」の一つで「周礼」「儀礼」と合わせて「三礼」と称される。周から漢にかけて儒学者がまとめた礼に関する書物を戴聖(たいせい)が編さんしたもので、全49編からなる。礼に関する規定や精神がまとめられている。「正心誠意」は礼記に書かれている言葉で「心を正しく持ち、誠実に物事に取り組むべき」という教え。主に政治理念に用いられる。現代で一般的に使われる「誠心誠意」は「真心を持って熱心に物事に取り組む」という意味。

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