「できないことはやらない」エナジック、大院大高…なぜ「ノーサイン野球」は躍進を起こせるのか

[ 2025年4月16日 08:00 ]

大院大高・辻盛英一監督
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 高校野球で「ノーサイン野球」を実践するチームの台頭が続いている。今春選抜では、創部4年目のエナジックスポーツ(沖縄)がエンドランや盗塁などを選手自らの判断で仕掛けて初戦を突破した。試合後の取材では、神谷嘉宗監督が「監督が指揮するのが野球なのか。この考えを変えないと、やらされている野球しかできない」と言葉に力をこめて、自主性に重きを置くことの重要性を訴えた。

 強豪私立がそろう大阪でも、ノーサインを貫く高校が躍進を続けている。甲子園出場が1996年春の1度しかない大院大高だ。今坂幸暉(現オリックス)を擁した昨春の大阪大会で大阪桐蔭、履正社を破って初優勝を挙げると、新チームとなった昨秋も近畿大会8強入りを果たすなど着実に力をつけている。

 23年3月に就任した辻盛英一監督がノーサイン野球を掲げて快進撃が始まった。同監督は強調する。「勘違いされやすいけど、ノーサイン野球はノー作戦ではないんです」。統計学を基にしたセイバーメトリクスの論文を読み漁って得点効率の高い作戦を把握し、実戦練習を通して選手と知識を共有してきた。

 「この場面、このカウントでの得点確率はこうだから、こういう作戦を取れる可能性があると全選手が分かっている。だから試合では、その作戦の中から選手自身が取捨選択をし、勝手に試合の中でやってくれています」

 選手が作戦を選ぶことと、監督がサインを出して指示することの差は何なのか――。「自分ができないことはやらなくなるので成功確率が上がります。たとえば、無死一塁でバントをしても得点確率は上がらない。ただし、打者が打率0割に近ければバントした方がいいですよね。この投手は打てないなと思えばバントしてもいい。“5打席で1度は打てると思うなら打っていいよ”など確率を提示した上で、あとは選手に選択してもらっています」。選手は目の前の判断に自信を持っているからこそ、グラウンド上で生き生きと動き回ることができる。

 サインを出さないとなれば、試合中の監督の仕事も変わってくる。「試合中の役割はアナリストだと思っています。試合中にデータを集め、投手に癖がないかを見たり、得点確率を上げる方法を考えています」。監督が意外な一手を選択して局面を打開する「マジック」を選手が起こす日もあるだろう。ノーサイン野球を実践する高校の好成績が続くのは偶然ではない。(記者コラム・河合 洋介)

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