「SNS叩き」「ビデオ判定」も怖くない…令和に野球審判員を務める「メンタル」を西貝雅裕氏に聞いた
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100周年の節目を迎えた東京六大学野球連盟は12日開幕の春季リーグ戦から映像で判定を検証する「ビデオ検証」が導入された。14日に行われた東大―早大の2回戦では東大側から2度「ビデオ検証」が要請され、成功1度、失敗1度だった。
「リクエスト」が一般的になったプロ野球、そして節目を迎えた東京六大学野球でリプレー映像による判定検証が導入されたことによって、学生野球にもテクノロジーを駆使した判定検証は広まっていくだろう。
高校野球界でも意見が分かれる判定が起こる度に「ビデオ判定」導入の声が挙がっている。充実した中継設備のある甲子園大会では設備上は導入可能で、東京六大学野球が今後のモデルケースになる可能性がある。
全日本大学野球連盟は2月22日に神奈川県平塚市で行った審判研修会で2つの試みを実践していた。1つはタブレットで撮影した映像を用いた判定の検証。そして特筆すべきは「審判員のメンタルトレーニング研修」だ。今後の審判界にアジャストしていくための必要な技能と体感した。(取材 元NPB審判員、アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)
審判講習会といえば、先輩審判員が後輩たちに判定における「武勇談」を語ったり、一列に並んでセーフ、アウトコールを繰り返す「ゴー・ストップ・コール」を行ったりすることが一般的だ。だからこそ、全国の大学リーグから審判員が集結した研修会で「メンタル研修」が行われることは新鮮だった。
北海道から九州まで全国の大学野球リーグに所属する86人の審判員が集結した。審判技術、そしてメンタルのスペシャリストといえる人材が講師を務めた。高校野球の甲子園大会で活躍した審判員として知られ、スポーツメンタルトレーニング指導士の資格を持つ西貝雅裕氏が「令和時代に審判員として生き抜くためのメンタル」を説いた。
審判員にとって、メンタルとジャッジの技術は決して切り切り離すことはできない。規則に関する知識を深く知っていても、高いアンパイア技術を備えていても、本番で発揮できなければ、「絵に描いた餅」だ。西貝氏が言葉に熱を込める。
「私は審判になる前からメンタルトレーニングについて勉強しており、資格も持っていたので主に選手に指導をしていました。自分が審判をするようになり、実は審判も選手と同じでメンタルが大事と気づいた。審判として試合に立つとやっぱり、凄くドキドキするわけですよ。“これはメンタルが必要だな”と実感しましたね」
情報化社会になった現代はアマチュア球界においても、ミスジャッジを犯せばSNSを通じて話題になることがある。試合での緊張に加え、新たな重圧に耐えながらグラウンドに立つ必要がある。だからこそ、判定を下すにおいてより、メンタルが鍵になる。
「一番は呼吸法を意識しました。野球はプレーが止まっている時間が長いので、呼吸を意識することができます。意識的な呼吸をすることで緊張を和らげられる。そして“自分はできる”や“大丈夫だ”など自分自身とセルフトークすることも緊張に対して有効です」
セルフトーク。この言葉には思わず心の中で「その通りだ」と同調した。記者もNPB審判員時代は試合中にずっと独り言を続けた。「バッター野間や、ショート飛んだら際どくなるぞ…ショートに行った!一塁は…スパイク一足分、アウトや…一塁手はちゃんと捕球しているな?」などと自分自身と会話することで、判定を下すためのチェックリストをクリアした。西貝氏はそれを言語化していた。
さらにミスジャッジを防ぐメンタルも大事だが、ミスジャッジをした後のコントロールも重要だという。
「判定を間違えた後も試合は続きます。そこで落ち込み、審判員としてのパフォーマンスを発揮できなければ、さらに両チーム、他の審判員に迷惑をかけてしまう。試合中に反省してしまう心情は理解できますが、反省は試合が終わってからできるわけで、次のプレーに意識を向けるべきです。だからこそ思考、感情のコントロールに取り組んでいくことが大事。スポーツ選手は経験則としてメンタルが大事だと知っていますが、指導者になっるとトレーニングとして捉えないケースが多い。審判員も“切り替えないといけない”と理屈では分かっていても、切り替えるためにはトレーニングをしていないと実践できないわけです。結局、コントロールできないことに引きずられないことが重要。自分がコントロールできるのは次の判定でベストを尽くすことだけなのです」
西貝氏が語ったのはダメージコントロールの概念だ。もし失敗しても最小限に留める。それを行うためには訓練されたメンタルが必要になる。
将来的に甲子園大会など高校野球でも「ビデオ検証」の導入は自然な流れだ。試合中に下したジャッジが変更になった場合、それ以降も安定した判定を下すためには強いメンタルが求められる。「これだけテクノロジーが進化している時代なので、それを活用しない手はないでしょう。ただ判定が覆ったとしても、堂々と訂正できるようになったと前向きに受け止め、次のプレーをシンプルにプレーをジャッジできるかが大事になる」と言った。
アマチュア球界にテクノロジーを駆使した判定検証が広がる未来が迫るからこそ、新たな環境でジャッジする審判員のメンタルの重要性は増す。西貝氏が説いた「メンタル」の考えは今後の必須科目となりそうだ。
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