【内田雅也の追球】凡事徹底は阪神伝統の姿勢 「吉田イズム」を胸に、さあ勝負の日々が始まる

[ 2025年3月27日 08:00 ]

25日、吉田義男さんのお別れ会で弔辞を読んだ岡田顧問
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 阪神が今年掲げたテーマに「凡事徹底」がある。カー用品「イエローハット」創業者、鍵山秀三郎の座右の銘で「誰にでもできる平凡なことを、誰にもできないくらい徹底する」と、1970年代に提唱していた。

 掃除を徹底し、トイレは素手で磨いた。掃除運動は社の内外に広がり、「日本を美しくする会」の創唱者となった。

 94年に出した著書『凡事徹底』(致知出版社)では福沢諭吉が孔子の「鄙事(ひじ)多能」を教えていたという逸話を引用している。<鄙事、つまり普通の人たちが雑事と片づける細々としたこと、例えば、朝起きたら布団をたたむとか雨戸を開けるとか、ちょっと家の前を掃くとか、そういった身辺の雑事に対していつも多能で、器用でなければいけない>。

 凡事徹底は古今東西に通じる姿勢で<天下に名をなす人は、皆この凡から出、凡に徹しきっている>と詩人・坂村真民が同書に「序のことば」を寄せている。

 阪神監督・藤川球児は現役時代に<野球だけやって、プロで活躍したからといって、それだけで優れた人間ということにはなりません>と書いている。2008年発行、日本野球機構・日本プロ野球選手会共同制作の小冊子『夢の向こうに』で、子どもたちに向けて説いている。<世の中にはいろんな仕事があり、みんなプロとしてお金をもらっています。僕は野球選手より朝早く起きて会社に行く人の方が偉いと思っています>。

 この姿勢が野球にも通じる。思えば、今の野球規則の原型、アレクサンダー・カートライトが1845年に制定した「ニッカボッカー・ルール」の第1条は「メンバーは決められた時間通りに集合すること」だった。

 野球は失敗の多い競技だけに、凡事をいかに徹底できるかが勝敗を分ける。25日にあった吉田義男氏お別れの会で弔辞を読んだ前監督でオーナー付顧問の岡田彰布は一昨年の日本一を「当たり前のことを当たり前にやるという吉田イズムを学ばせていただいたおかげです」と語りかけた。「時代が変わっても世代が変わっても吉田イズムをチームに、若い世代に継続し続けなければならない。それが私の果たすべき役割だと思っています」

 何も今に始まったわけではなく、阪神伝統の姿勢なのだろう。凡事を積み重ねる勝負の日々が迫ってきた。 =敬称略=
 (編集委員)

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