【内田雅也の追球】データを重視する野球か、流れや直感のような感性を大事にする野球か

[ 2025年2月13日 08:00 ]

モーションキャプチャーで得たデータを確認する畠(左)
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 学生時代、4畳半1間の下宿で麻雀(マージャン)に明け暮れていた時期があった。ハウツー本も相当読んだ。雀士・阿佐田哲也(作家・色川武大)の「麻雀は確率ではなく濃淡」との名言を知った。確か、プロ雀士・小島武夫と作家・阿川弘之の対談本にあった。

 確率的に残り牌数の多い両面(リャンメン)待ちではなく、あえてシャンポン待ちに構えて、あがったりする。

 なるほど濃淡である。場の空気や牌の流れを読む。確率を超えた勝負師の勘に感じ入った。

 野球でも場内の空気や試合の流れはある。目に見えないが確かにある。

 昨年末12月23日放送のドキュメンタリー番組『情熱大陸』で松井秀喜と対談したイチローが進化し続けるデータ野球に「洗脳されてしまってる」と案じていた。

 大リーグの試合中、ベンチ内で選手たちはタブレットに見入っている。データや自身の打席内容を振り返り、対策を立てているのだろう。

 イチローは現役時代、試合中にベンチを離れなかった、と本紙通信員・笹田幸嗣が書いていた。イチローが大事にしていたのは試合展開を見て、感じ、流れを読むことだった。相手投手の特徴や配球、癖、心理状態を考え、打席に備えた。

 将棋の十七世名人(永世名人)、谷川浩司がAIについて<ソフトは現局面での最善の指し手を提示するので、その局面に至った手順や流れを重視する人間の感性とは相いれない>と本紙『我が道』で書いていた。

 それに<修羅場では直観が論理を超える>という勝負師の感覚がある。元チェス世界王者のガルリ・カスパロフが著書『決定力を鍛える』(NHK出版)で書いていた。

 阪神オーナー付顧問・岡田彰布は11日、北谷で練習試合・中日―DeNA戦を見た際、「DeNAのメンバー表を見て驚いたわ」と言う。コーチ陣にアナリストが並んでいたからだ。

 日本のプロ野球でもタブレット端末のベンチ持ち込みが検討され、今年から2軍公式戦で解禁される。イチローが「いずれ日本も……」と懸念する状況は近づいている。

 目に見えない空気や流れや直観といった人間的要素を持ち出すと、データアナリストや統計専門家から「遅れている」と非難されるのかもしれない。数字と感性。この話はまた取材して続きを書きたい。 =敬称略=
 (編集委員)

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