三菱重工East・江越啓太 遊撃の定位置獲得へ、指南役は矢野主将 昨季の悔しさを糧に都市対抗連覇狙う

[ 2025年2月13日 18:58 ]

三菱重工East・江越啓太

 アスリートとしての本能よりも、最後はチームを思う気持ちが上回った。三菱重工East・江越啓太内野手(27)は、昨年10月中旬に右足を負傷。日本選手権の開幕を目前に控えた同月下旬、佐伯功監督(49)に大会期間中の試合出場を辞退する旨を申し出た。

 「大会に合わせて、みんな状態を上げてきていた中、自分が出るよりは絶対にチームにとって良いだろうと。それぐらい力のあるチームですので」

 勇気ある決断は、断腸の思いで下した結論だった。悲願の初優勝を遂げた昨夏の都市対抗。昨春から遊撃に再転向していた江越は打撃の状態が思うように上がらず、1試合も出場することなく大会を終えていた。目前に迫っていた京セラドームでの激戦は、江越にとってはリベンジの舞台。誰よりも強い気持ちで照準を定めていたが、互いに高め合ってきたライバルにその座を譲った。

 「チームが優勝したことはすごくうれしかったですが、自分は第一線で活躍することができなかった。その分、とても悔しい思いがありましたし、その悔しさを忘れずに、日本選手権では誰にも負けない活躍をするために日々、戦っていました」

 夏の終わりからは、悔しい経験を力に変えていた。都市対抗の本戦前は代打要員としての調整。その中で、レギュラーを張っていた時とは違う、新たな自分と出会うことができたという。

 「スタメンと違って4、5打席立てるわけではない。少し開き直ってじゃないですけれど、打てなくても当たり前というスタンスでした。そう考えたことで初球からどんどん仕掛けられるようになりましたし、ベンチでピッチャーを見る時間が長くなった分だけそれなりの準備もできた。あとはそれを打席で表現するだけでした」

 以来、打席の中で投手に立ち後れることはなくなった。入念な準備があるから、ファーストストライクからコンタクトすることができる。超積極的なスタイルは相手バッテリーを悩ませ、2打席目以降も優位に立てるという好循環。8月のJABA長野県知事旗争奪大会は12打数5安打の打率・417、9月のJABA秋季神奈川県企業大会でも東芝、ENEOSを相手に2試合で10打数7安打の打率・700と打ちまくった。だが、野球の神様はまたも、江越に試練を与えてしまう。日本選手権への最終調整となるはずだった10月のJABA伊勢・松阪大会で右足に死球を受け、戦線を離脱した。懸命の治療、リハビリを続けたが、日本選手権の出場はかなわなかった。当時の思いを、江越が振り返る。

 「佐伯監督に決断をお伝えしたあとは少し落ち込みました。でも、それも、1時間ぐらいですかね。時間が経つにつれて、“来年やってやろう”という気持ちがどんどん大きくなっていきました」

 二つの試練を乗り越え、今季は再び遊撃の定位置獲得に向けて練習に明け暮れる。最高のお手本は江越が不在の間、遊撃で好守を連発していた矢野幸耶。主将も務める生粋のリーダーは二塁に取り組みながら、手取り足取りで助言を送るなど、江越の指南役を買って出る。個人練習では基礎練習を徹底。ゴロ捕球、ハンドリング、ステップの踏み方など地道なメニューを黙々とこなす姿は、ナインの誰もが一目置く。

 「二遊間が乱れるようなことになれば、試合も乱れてしまう。今年は1年間を通してスタメンで活躍して、チームの都市対抗連覇に貢献したいと考えています」

 8月28日の都市対抗開幕戦。前年覇者の雄姿を見つめるべく、東京ドームの応援席は埋め尽くされるだろう。右越えソロを放った23年の王子戦以来となる晴舞台。どん底から這い上がってきた江越に降り注ぐ大歓声は、仲間にとっても大きな活力となるに違いない。

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