「育成の虎」阪神・球児SA新体制へ新路線 2軍施設拡充で指名5人前後増加 “隠し玉”鍛え上げる

[ 2024年10月6日 05:15 ]

藤川球児氏
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 阪神が、今月24日のドラフト会議で育成選手の指名人数を例年より増やす方針であることが5日、分かった。来年3月に移転する新ファーム施設は、現在の鳴尾浜に比べて選手寮の部屋数が増え、室内練習場などの設備も拡充されることから、以前にも増して“金の卵”を抱えることが可能となるため。育成枠拡大方針を受け、2年連続となるドミニカ共和国での入団テストも継続実施する。次期監督への就任が決定的な藤川球児氏(44)とともに、国内外の“隠し玉”を発掘し、自前で鍛え上げるシステムを構築していく。

 藤川球児新監督で挑むことが決定的な来季に2年ぶりのリーグ奪冠を目指す猛虎は、中長期的な視野に立って“金の卵”発掘にも全力を注ぐ。その一手として、今月24日のドラフト会議では、育成選手を例年より多く指名する方針を固めた。球団関係者は「増える可能性はある」とした上で、「2軍施設が移転して、選手寮や室内練習場などの施設も拡充される。受け皿は大きくなる」と説明した。

 育成選手の指名は例年1~2人だった。それを今年は5人前後の指名を見込んでいるもよう。球団の基本スタンスとして高卒選手は育成指名しないため、大学生や独立リーグからの獲得が濃厚。すでにスカウトは、ずぬけた俊足の持ち主や天性の飛ばし屋など一芸に秀でた“隠し玉”に目を光らせるべく、例年以上に独立リーグへの視察を増やしてきた。

 「育成の虎」を打ち出す背景には、新「虎の穴」の開設がある。来年3月、現在は兵庫県西宮市の鳴尾浜に構えるファーム施設が同尼崎市に移転。最新鋭の設備を持つ新球場「日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎」が新設され、隣接の「虎風荘」は現在の32部屋を上回る38部屋が準備される。打撃レーン6カ所などを備えた室内練習場やトレーニング室など練習環境も拡充され、より多くの選手が練習することが可能となる。生え抜き選手の育成強化を目的とした新拠点の完成が、育成選手の大量指名方針を支える。

 さらに、海の向こうに散らばるダイヤの原石も掘り起こす。今年1月に続き、今オフもドミニカ共和国でのトライアウトを実施することが決まった。前回は藤川球団本部付スペシャルアシスタントも現地に足を運び、ベタンセスとマルティネスの獲得に尽力。2投手は日本流指導で着実に成長を遂げ、ファーム公式戦でも存在感を示した。“二匹目のどじょう”を狙い、異国の地でのスカウティングも継続していく。

 22年オフからの第2次岡田政権では他球団のFA選手で補てんすることなく、既存の選手をレベルアップさせることで優勝争いを展開した。指揮官が代わっても、その方向性にブレはない。自前で獲得した国内外の有望株を地道に鍛え上げ、黄金時代の到来を期す。

 ○…阪神は05年から始まった育成ドラフトで、これまで19人を指名。7人(投手2、野手5)が1軍デビューを果たしている。ドラフト指名第1号は、開催3年目07年の田中慎太朗内野手(立正大)で同年は1人だけの指名だった。その後08、10年の2度、最多の3人を指名。12~16年の5年間の不参加を経て、17年以降は毎年1~2人を指名している。

 ▽阪神2軍拠点 1994年10月から拠点としてきた鳴尾浜球場から、来年3月に兵庫県尼崎市の小田南公園に移転する。「日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎」は太陽光発電や省エネの徹底、雨水利用など環境に優しい取り組みを進める国内初の「ゼロカーボンベースボールパーク」として整備。両翼95メートル、中堅118メートル、内野は黒土で外野は天然芝。本塁から中堅へ向かってほぼ南の方位も含めて形状、仕様は甲子園球場と同じ。観客席は3600席。LED照明6基のナイター設備。トラックマンを導入し、8台の専用カメラを設置して「ホークアイ」による分析も可能だ。併設する室内練習場は建築面積6168平方メートルで甲子園室内の1・5倍。ブルペン6カ所、打撃練習6レーン(ボール自動回収機能付き)を備える。3階建ての選手寮は「虎風荘」の名称を継承。38部屋(将来的に5部屋増設可能)にトレーニング室、リハビリ用流水プールもある。

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