大谷「51―51」後押ししたルール変更“パワー偏重”抑制進めるMLBのフロントランナー 異次元の両立

[ 2024年9月20日 16:30 ]

<マーリンズ・ドジャース>7回、大谷は50号2ランを放ち50-50を達成、ベンチを出てスタンディングオベーションに応える(撮影・沢田 明徳)
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 ドジャース・大谷翔平投手の史上初の「50―50」達成を後押ししたのは、昨季からのルール変更である。最も走者に有利に働いているのは、けん制の回数が制限(3度目でアウトにできない場合はボーク)されたこと。大リーグ全体の盗塁数は昨季、前年比41%増で史上2番目に多い3503。今季はさらに上回るペースだ。

 これはMLB機構の狙い通りと言える。近年は「フライボール革命」により、本塁打が激増し、17年には初めて年間6000本を超えた。一方で盗塁は減少し、21年のリーグ合計2213は10年前から1000以上減った。投手は「スライドステップ(クイックモーション)」ではなく、足を大きく上げる「レッグキック」で力勝負を挑む。極端に言えば、「本塁打か三振か」の野球になっていた。

 NBAやNFLの人気に押されているMLBとしては、パワー偏重の野球を抑制し、より動きのあるスリリングな野球の復活に活路を見いだそうとしている。昨季はブレーブスのアクーニャが史上初の40発70盗塁を達成し、今季は大谷が前人未踏の「50―50」に到達。戦術として盗塁を多用するチームも現れ、一番乗りで地区優勝を決めたブルワーズはチーム盗塁数が22年の96から昨季は129、今季は197に増えている。

 野球のトレンドが変われば、対抗する新たな流れも出てくる。日本ではクイックモーションは1・2秒(投手が投球動作を開始してから捕手が捕球するまでの時間)を切れば合格点とされるが、今季のメジャー平均タイムは1・6秒。これでは大谷ら走力ある選手がフリーパスで走るのは当然だ。18日の試合ではマーリンズの左腕ウェザーズが49個目の盗塁を許したが「人生で初めてスライドステップで投げた」と話した。ある選手が「1・5秒台の投手が1・3秒台まで短縮している」と話すように、大リーグ全体でスライドステップが見直され始めている。

 MLBが求めているのは多様な野球スタイル。とんでもないパワーを誇るヤンキースのジャッジがいれば、超人的なスピードを持つレッズのデラクルスもいる。パワーとスピード、その2つを「50」という高い領域で両立させたのが大谷だ。彼がMLBのフロントランナーであることは疑う余地がない。
(甘利 陽一)
 

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