【新春対談 阪神・森下×サーファー松田詩野(2)】森下 ファームを経験したことで後半戦頑張れた

[ 2024年1月1日 05:15 ]

特製カルタを楽しんだ2人。松田(左)に先んじて森下が取った札は「ア」レンパのカード!!(撮影・岸 良祐)
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 (1)から続く。

 森下 松田さんは阪神タイガースはご存じですか?

 松田 はい。知っていますよ。

 森下 野球とか見ることはありますか?

 松田 テレビではたまに…。一度、カリフォルニア州で練習をしていた時に、エンゼルスの試合を観戦するタイミングがあって、見に行ったことがあります。大谷翔平選手も試合に出場していました。

 森下 僕はメジャーは生で見たことないですね。観客の一体感が凄いですよね。

 松田 試合中、応援の声は聞こえるんですか?

 森下 良くも悪くもめっちゃ聞こえます(笑い)。特に関西のファンの方々は、物事をはっきり、包み隠さずに言うので…。それでも全く気にしていないです。

 松田 試合中、球場の歓声は凄いと思うんですけど、それでも気持ちが高ぶったり、逆に集中できなかったりすることは、ないですか?

 森下 ないですね。プロに入ってからはメンタルも強くなって、ほぼ何も感じないというか…。“歓声が大きいな”“何か言われているな”とか思うんですけど…。野球は「ミスをするスポーツ」なので、失敗ばかりなんです。だから“失敗をしてもいいでしょ”というくらいの強気のメンタルでやっています。サーフィンをしているときは、歓声は聞こえないですよね?

 松田 波に乗り終わって、岸の方に近づいた時はちょっと聞こえたりはします。ちなみに森下さんは、サーフィンの詳しいルールとか知っていますか?

 森下 全然わからないですね…。海に行った時にサーフィンをしている人は見かけますけど、競技としてやっている方にはお会いしたことがないですね。

 松田 今回はサーフィンの面白さも伝わればいいなと思っています。

 森下 去年は、6月にパリ五輪の出場権(※6)を獲得されて、松田さんにとっても良い一年でしたよね。

 松田 パリ五輪の切符を獲得できたことが本当に大きかったです。このために頑張ってきた部分もあったので、凄くうれしい気持ちと“もっと頑張ろう”という思いが強まりました。

 森下 僕は昨季、開幕スタメン(※7)で出場させてもらいましたけど、2度(※8)ファームに落ちて…。精神的にもキツい思いをしたので、それが後半戦への糧となりました。後半戦は基本的に3番(※9)を任せてもらい、日本シリーズまで行くことができました。いろいろなことがあった一年でした。岡田監督から学ぶことも多かったです。監督の下で野球ができたのは凄く良かったです。岡田監督はご存じですか?

 松田 知っています。今回の対談を伝えた父からは野球の話も聞きました。

 森下 僕は関東出身なのでわかるんですけど、関東と関西では阪神に対する熱量が全然違うんですよ。もうハンパない!テレビも新聞も、タイガース一色です。

 松田 私は個人競技ですが、森下さんも団体競技とはいえ、打席に入ったら1人ですよね。1年目で、メンタルの部分で苦労されたことはありましたか?

 森下 もちろん初めて対戦する投手ばかりだったので、対応することが難しかったですね。アマチュアからプロの世界に入って、投手が投げるボールの質も違いました。でも、ずっと引きずっていても仕方ない。データを見たり、自分自身のプレースタイルを考えたりして、後半は多少うまくいった部分もありました。やはり簡単にはいかない世界だなと感じます。

 松田 私も常に自分との戦いです。自分で気持ちとかモチベーションを上げていかなければいけない。戦略のことなどコーチとも話はするんですけど、海の中に入ったら1人なので。自分で考えることが大変な部分でもあり、成長できるところかなと思います。

 森下 松田さんは自然の「波」と戦っていますよね。自然との闘いの魅力ってどんなところですか。

 松田 良い波に乗れたときのうれしさは大きいですね。同じ波が来ないというのは難しいことなんですけど、何回もチャレンジできるというところが魅力かなと。

 森下 波を“読む”んですか?

 松田 ずっと海を見ていると、その日の潮の流れとかで、不規則ではあるんですが“ここに良い波が来ているな”とか考えます。試合だと“最初はこっちの波を狙って、波が来なかったらこっちに動こう”とか、そういうことを考えてやるようにしていますね。

 森下 「良い波」ってどんな波なんですか?

 松田 人それぞれ好みもあるんですけど、それなりに長かったり、あとはあまり風が入っていない、水面がきれいな波とか…。

 森下 これは、やっている人にしかわからないことですね(笑い)。見ているだけの人には全然わからない!(笑い)。試合では“ここからここの範囲までの波の中で競技をしてください”って決まっているんですか?

 松田 うん、大体。まあ、ジャッジ(審判)が見える範囲まで、って感じで、結構広くは使える感じです。

 森下 海以外では、どういう練習をされているんですか?

 松田 サーフィン以外にも、体力づくりや筋力を上げるトレーニングとか…。海での練習が一番大事なんですけど、体力づくりは大会に出場する上でも大事です。森下選手は、プロに入って、体の鍛え方とか、練習の質とか、変わりましたか?

 森下 元々、筋肉を分割的に見た上でのトレーニング方法を取り入れていたので、意識としては、そこまで変わっていないです。ただ、先輩方の試合前の準備というのは凄く勉強になります。各自のトレーニングをしてから、試合に入っている。アマチュアではウオーミングアップをして試合をしますが、「アップの前のアップ」をするのがプロ。2時間半も「アップの前のアップ」をする選手もいます。そういうことはプロに入って学びました。

 松田 もちろんサーフィンもウオーミングアップはあるんですけど、アップなしで、そのまま海に入る選手もいたりとか…。今、アップの前のアップが2時間半と聞いて、ビックリしています(笑い)。アップの前のアップ…ちょっとやってみようかな。

 森下 いやいや、それで調子を崩されても…(笑い)。やりたいようにやってください!(笑い)。松田さんは日本の球場で野球を見たことはないんですか?

 松田 ないですね。

 森下 機会があれば、是非甲子園に来てほしいですね。本当に観戦に来られるとなれば、僕が招待させてもらいます。良い席で、食事をしながらゆっくり見てもらえれば。お酒は飲みますか?

 松田 はい、たまに。

 森下 じゃあビールとか飲みながら観戦してもらえれば。ちなみに、野球選手以外のスポーツ選手と交流はありますか?

 松田 ないですね。個人競技というのもあるし、あまりないです。

 森下 団体競技に対する憧れはありますか?

 松田 試合前の声掛けとか、一緒に勝利を分かち合うこととか、つらい時を一緒に乗り越えた仲間だからこそ、勝った時にみんなで盛り上がれるのは“いいなあ”と思います。

 (3)へ続く。

 (※6)23年6月、中米エルサルバドルで開催されたワールドゲームズでアジア勢最上位となり、代表に内定。今年2月にプエルトリコで開催のワールドゲームズ出場を経て、正式決定する。

 (※7)23年3月31日、DeNAとの開幕戦(京セラドーム)に6番・右翼で先発。三ゴロ失策、左飛、遊ゴロの3打数無安打で交代。

 (※8)23年4月17日に再調整で初の抹消。5月19日に復帰。6月9日に再び再調整で抹消。同23日に復帰。

 (※9)23年7月25日の巨人戦(甲子園)で初の先発3番起用から、レギュラーシーズン終了までに出場した56試合中48試合で先発3番。ポストシーズンは10試合すべて先発3番だった。

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