「村上宗隆を見て選手引退」 東洋大・福原大喜さんは西部ガス長崎で「100年に1度の変革期」に挑む

[ 2023年12月9日 20:14 ]

エースとして東洋大をけん引した細野(左)と主務として支えてきた福原さん (撮影・柳内 遼平)
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 東都大学野球リーグ2部の東洋大は9日、小学生を対象とした野球教室の「ベースボールクリニックin川越」を開催。今秋まで主務としてチームを支えてきた福原大喜さん(4年)は運営を担当した。野球部の練習場と寮がある埼玉県鶴ケ島市で過ごす日々は残りわずか。卒業後は西部ガス長崎に入社予定。「100年に1度の変革期」を迎えている長崎をインフラから支えていく。

 「主務」。大学野球ファンではないと、聞き慣れない言葉かもしれない。

 選手たちをまとめ上げるリーダーが「主将」であり、野球部の運営を担い、部外との窓口も担当するマネジャーたちのトップを「主務」という。高校より「自主性」を求められる大学野球部では重要度の高い存在だ。

 東洋大は今春に2部から1部昇格を果たすも、秋には再び2部に降格する激動の1年だった。昨秋の新チームから主務に就任し、チームの「明・暗」を誰よりも知っている福原さんは、後輩たちが1部復帰を果たす日を待ち望んでいる。

 「2部から1部に挑む難しさ、2部から1部に上がった時の喜び、1部で勝てた時のうれしさ、1部に残る難しさ…後輩たちは全てを知っていると思う。強みにして頑張ってほしいと思います」

 熊本の強豪・九州学院(熊本)、そして大学野球の名門で知られる東洋大でマネジャーを務めた。転機は九州学院に入学したばかりの4月。当初は選手として入部したが、周囲のレベルに衝撃を受けた。2学年上にいた村上宗隆(現ヤクルト)。軽々とフェンス越えを連発する姿に「自分はあのレベルまでいかないことが瞬時に分かった。村上さんがいて、同学年には友田佑卓(現日大)、蒔田稔(明大)がいた。いろいろと考えた時に選手はやめるべきだと思った」。最もチームに貢献できる場所はマネジャーと確信した。

 九州学院では周囲を喜ばせることに力を尽くす「友喜力」をテーマに駆け抜けたが、高校野球に完全燃焼することはできなかった。3年夏の熊本大会決勝では5―7で熊本工に惜敗。最後の夏にあと一歩及ばなかった夢の甲子園。悔しさから「甲子園を見たくなかった」と大会が放送されるNHKは2カ月も見なかった。その夏、履正社(大阪)が日本一になったことは夏休み明けに友達から聞いた。「よく“負けてよかったんだ”みたいなことを言うことがあると思うんですけど、僕は全くなかった。本当に悔しくて勝ちたかった。立ち直れなかった。大学でもやるしかないと思った」。高校でつかめなかった勝利を目指し、東都リーグの名門・東洋大を進学先に選んだ。

 東洋大でも出会いがあった。22年シーズンまで指揮を執った杉本泰彦監督からは「チームに寄り添いなさい。どうしても人に寄り添いたくなるけど、マネジャーは違う。選手に寄り添うのではなく、チームに寄り添いなさい」と繰り返し教わった。福原さんは当初、その言葉を完全に理解することができなかったという。それでも学年が上がるにつれ、身に染みるようになった。チームはレギュラーだけでは成り立たない。3年秋に主務に就任すると、俯瞰(ふかん)してサポートすることで、チームが一丸となることを実感。浮き沈みのあるチームをまとめる立場は心身共に負荷が高かったが、同じ九州学院出身のヤクルト・村上、同学年で主力としてチームをけん引した明大の右腕・蒔田、日大の正捕手・友田の活躍も心の支えになった。

 主務として磨いた「問題解決力」「調整能力」「マネジメント力」を社会人として生かす。東洋大を卒業後は地元・九州の西部ガス長崎に入社する予定だ。長崎駅周辺、市街地中心部は大規模な開発が行われ、「100年に1度の変革期」と称される長崎市。発展の重要なカギとなるインフラ事業。「何度も長崎に行きましたが“短期間でこうなるか”っていうくらいにまちが変化していく。長崎が成長する時に自分も一緒に成長したいと思いました」と目を輝かせる。

 「高校、大学での経験を生かして社会で活躍したい。父(浩志さん)のように人に慕われるような、尊敬されるような社会人になりたい」と迷いなく言う。人と人をつなげ、チームで戦ってきた福原さんの新たな挑戦がスタートする。(柳内 遼平)


 ◇福原 大喜(ふくはら・だいき)2001年(平13)11月6日生まれ、熊本県熊本市出身の22歳。城東小4年から花園野球クラブで野球を始める。九州学院中では軟式野球部に所属し、外野手としてプレー。九州学院では1年4月からマネジャーに転向。東洋大では3年秋から主務就任。尊敬する人は九州学院の剣道部監督・米田敏郎氏、元九州学院野球部監督坂井宏安氏、父・浩志さん。

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