日本シリーズ史に残る大逆転劇前夜のドラマ 簑田浩二氏「“明日、頼むぞ”って。この一言です」

[ 2023年9月15日 19:53 ]

現役時代の簑田浩二氏(1984年撮影)
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 プロ野球の阪急、巨人で活躍し、1983年(昭58)に史上4人目のトリプルスリー(3割、30本塁打、30盗塁)を記録した簑田浩二氏(71)が15日に更新されたYouTube「プロ野球OBクラブチャンネル」にゲスト出演。巨人が3連敗から4連勝して近鉄を下した1989年の日本シリーズにまつわるエピソードを披露した。

 1970年代の阪急黄金時代を担った簑田氏は、東京ドーム元年の1988年に巨人へ金銭トレード。藤田元司監督が再登板した翌89年にセ・リーグを制し、簑田氏自身も5年ぶりに日本シリーズの舞台に立った。

 近鉄との戦いは、予想に反して3連敗スタート。巨人は1番の緒方耕一が連敗中わずか1安打と、先頭打者の不振が低調な打線の要因になっていた。王手をかけられ、戻った宿舎は重苦しい空気に包まれていた。「(宿舎の)エレベーターの前で、藤田監督からね、“みの、明日頼むぞ”って。この一言です。で、“分かりました”」。酸いも甘いも知り尽くした37歳のベテランには、言葉の意味することが十分に分かっていた。

 簑田氏によると、当時の巨人宿舎には、リラックスルームが設置。コーチやベテラン選手を中心に、談笑したりグラスを傾けたりして、息抜きをしていた。簑田氏は「大役」を告げられた夜も、そのルームへ直行。いつものようにお酒を口にしていると、コーチから「お前、明日先発じゃないか」と驚かれたという。

 「1番・右翼」で先発した簑田氏は、初回の第1打席に左中間二塁打。犠打で三進した後、続く岡崎郁の浅いフライで果敢に本塁へ突入し、先制のホームを踏んだ。「当時のベースコーチャー、近藤昭仁さん(2019年死去)ですよ。タッチアップの時に“どうするの”って聞いたら、返事が行け、とも何ともなかったんです。自分で判断して、うまくスライディングして、1点取って…」

 シュアな打撃と好判断、そして決戦前日でも平常心のベテランが流れを変え、球史に残る大逆転ストーリーは完結した。

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