【内田雅也の追球】「中継」意識実った「10秒84」 岡田監督がこだわる1点を防ぐプレー

[ 2023年2月8日 08:00 ]

佐藤輝の二塁打で板山は本塁を狙うもタッチアウト(捕手・梅野)(撮影・大森 寛明)
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 阪神キャンプ初のシート打撃で見られた好中継プレーを書いてみる。

 無死一塁、佐藤輝明が村上頌樹のカーブをはじき返し、三塁線をゴロで抜いた。左翼手の新外国人シェルドン・ノイジーは懸命に打球を追い、フェンス到達手前、逆シングルで捕球し、すぐにカットマンの遊撃・木浪聖也に送球、木浪はワンバウンドで本塁にストライクで転送した。捕手・梅野隆太郎は難なくタッチし、一塁走者・板山祐太郎を刺したのだった。

 板山は決して足が遅いわけではない。もちろん本番なら三塁で自重するタイミングだが、まだキャンプ序盤である。本塁突入は無謀でもない。

 この時、手もとのストップウオッチで計っていた。佐藤輝インパクトの瞬間から、本塁タッチまで10秒84だった。

 これはかなり速い。一塁から本塁突入のタイムについてはデータがないが、プロ野球で三塁打の最速タイムでも10秒台はまれだ。一塁でリードをとり、いいスタートを切ったとしても10秒台後半だろう。ならば、この日の10秒84は速い方だ。

 まず左翼手ノイジーがフェンス前で打球に追いついた俊敏さがある。さらにギリギリで逆シングル(バックハンド)で処理した点も素晴らしい。

 ノイジーは大リーグ時代、外野手だけでなく、一、二、三塁、遊撃と内野全ポジションを守っていた。捕ってから素早い送球には定評がある。さらに木浪の中継である。

 「あれは良かった。今日のシートの見どころだった」とヘッドコーチ・平田勝男がたたえた。昨年11月の秋季キャンプから、新監督・岡田彰布の方針で、シートノックの時点から「全球カット」で通している。外野手は内野手に低くて強い送球を徹底してきた。

 平田は言う。「カットの意識が一つの形になったのだと見れば、喜ばしい。文句のつけようがないプレーだった」

 岡田の言う、1点を防ぐ意識である。ついでに佐藤輝の次の打席を書く。1死二塁で岡田は外野陣に前進守備を命じた。「もちろん1点を防ぐ隊形だけど、監督が見たかったのは外野前進で佐藤輝がどんな姿勢で打つのかだったと思う」と平田。逆に1点をもぎ取る場面でもあったのだ。結果は3ボール―0ストライクから二ゴロだった。

 まだ季節浅く、結果に一喜一憂する時期ではない。ただ、1点を巡る攻防への意識の高まりは感じられた。=敬称略=(編集委員)

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2023年2月8日のニュース