独占手記 武豊が親交深い藤浪にエール 今秋、ブリーダーズカップ騎乗ならWSで再会しよう

[ 2023年1月25日 04:45 ]

藤浪にエールを送った武豊
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 阪神からポスティングシステムでアスレチックスに入団した藤浪晋太郎投手(28)と親交が深いJRAの武豊騎手(53)が24日、本紙に特別手記を寄せ、エールを送った。国内だけでなく、何度も海を渡ってチャレンジし続けた日本競馬界のレジェンドの言葉には重みがある。今秋に自身のブリーダーズカップ騎乗と藤浪のワールドシリーズ出場が重なれば、これ以上ない再会のシナリオ。新天地での活躍を願っている。  

 僕が00年に日本を離れてアメリカの西海岸を主戦場とした理由は一流の騎手が集結する激戦区だったからですが、もう一つはカリフォルニアの気候が好きという単純なものです。「そんなのかよ!」と思われるかもしれないですけど、澄み渡った青空はまるで絵はがきのような景色ですからね。

 晋太郎、とあえて普段の呼び名通り書きますが、僕の知る限り、晋太郎は移籍先の候補に気候のいい西海岸の球団が頭にあったと思います。天然芝と屋根のない球場にこだわりがあったのも、甲子園で育ったからじゃないですかね。

 アスレチックスは西海岸のオークランド。米国競馬の祭典と呼ばれる「ブリーダーズカップ」(11月3~4日)の開催地が今年は同じ西海岸のサンタアニタ競馬場だから、2人の夢ができました。僕は海外のG1で騎乗馬がいれば積極的に遠征するスタイル。メジャーリーグはワールドシリーズの真っ最中の頃。アスレチックスがワールドシリーズに出場していれば、時間を割いて観戦したいし、オフシーズンになっていたら、「帰国しないで待っています。サンタアニタ競馬場に応援に行きますよ」と晋太郎は言っていました。

 晋太郎は28歳。僕が日本を離れた時は30歳の時。正直、1年でも2年でも早くアメリカに行けば良かったな…と悔いたことはあったし、晋太郎はいいタイミングで夢をかなえたと思います。メジャーリーグの複数球団が興味を示したことが晋太郎のポテンシャルの高さを物語っている事実。きっと通用しますよ。得意な球種にスプリットがあるのは大きいという幾多の解説を信じます。確かにメジャーの打者は振ってくれますからね。

 晋太郎と遊びでもキャッチボールをしたことがない理由は痛い経験があるからです。それはイチローが現役時代、神戸の自主トレに付き合った時のこと。イチローが投手、僕が打者で対戦。大人げなく内角に球速130キロほどの球を投げてきて、木製バットで当てただけのどん詰まり。イチローはケラケラ笑っているんですよ。信じられないでしょうが、手のひらは内出血。(ダートの王者)コパノリッキーの大事な騎乗を控えていたので1球で退散しましたよ。だから、晋太郎がイチローの遊び心をまねて、速い球や得意のスプリットを投げたら、受け損なうのは目に見えていますからね。

 だから今度、エール代わりに使っていたグラブを欲しい、とねだっておきます。今年のグラブの色はオークランド・カラーで実物が新聞に載っていましたよね。一昨年にパープルの色にした時に「俺の色をパクったな」とちゃかしたけど、メジャー仕様に変えられました。今まで使っていたグラブを応援グッズ用にもらう、というのはいいアイデアじゃないですか。秋に米国で再会する日を楽しみにしています。(JRA騎手)

《藤浪が「一番尊敬するアスリート」》
 藤浪が武のファンで、武も虎党という関係から親交を持ち、武は過去に本紙に寄せた手記の中で「晋太郎と仲良くなったのはタイガースに入団して3年目くらい」「有馬記念の夜に一緒に食事をするのはコロナ前なら恒例行事」と振り返っている。藤浪は18年オフに武がプロデュースする京都市内のジムを拠点に自主トレを敢行。初の開幕投手を務めた21年には武のイメージカラーを意識した紫色のグラブを新調するなど「本当に一番尊敬しているアスリート」と慕っている。

 ▽武豊と米国西海岸 騎乗依頼が入ればステッキ一本で世界中を飛び回るのが騎手の仕事。00年、武豊が初めて長期遠征に出向いたのが米国西海岸だった。現地に居を構え、今年のブリーダーズカップの舞台であるサンタアニタやデルマー、13年に閉場となったハリウッドパークを主戦場に騎乗。この時、既に日本で確固たる地位を築いていた武豊でも乗り鞍の確保をはじめ、苦戦を強いられたが北米のトップジョッキーが集結する激戦区で経験を積み、腕を磨いて、その後の活躍につなげた。

 ◇武 豊(たけ・ゆたか)1969年(昭44)3月15日生まれ、京都府出身の53歳。87年、騎手デビュー。69勝で当時の新人最多勝新記録を樹立し、JRA賞最多勝利新人騎手を受賞。以降、数々の記録を打ち立てた。18年に前人未到のJRA通算4000勝を達成。昨年はドウデュースで6度目の日本ダービー制覇、夏に札幌のワールドオールスタージョッキーズで30年ぶり優勝を飾った。JRA通算2万3895戦4399勝、うち重賞350勝(G179勝)。1メートル70、51キロ。血液型O。

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